

浴室の大部分を占めるのは温泉の湯船で、2m超ある巨石が湯船のふちを囲むようにして並んでいる。源泉は地下200mから湧出する冷鉱泉で、京浜地区ならではの黒褐色をしているが、透明度は30cmほど。一部にはジャグジーもあるが、噴射の位置と勢いが微妙。そしてジャグジーを試しながら正面を向くと、「医学の温泉 ラドン室へ」という看板が目に飛び込んでくる。地下から湧出する温泉よりも、ラドン温泉のほうが売りなのは明らかだ。

ラドン室はガラス壁と扉で仕切られた浴室で、室内には5帖大の横長湯船がある。壁にはラドンの紹介や効能が掲げられており、まず興味深いのは「1963年以降、日本ドクターズクラブの研究スタッフは、物理学や医学界の諸先生のご指導により(ラドン発生器)を研究開発し、各地にラドン温泉センターを開業した」という趣旨の記述。高度経済成長真っ只中のレジャーブームの一面を担った、といっても過言ではないだろう。
ラドンガスは呼吸器や皮膚より吸収され、新陳代謝を促進し、老廃物の除去を促すという。そのほか多くの症状に効果あり。完全密室にしているのは、より効果を促すためか。ラドンガス自体は無味無臭なのに、密室のせいで塩素臭が気になって仕方がない。

パンフレットやホームページでは「滝のある温泉」をうたっているが、その滝というのは露天スペースの女湯との境目にある。ロープで立入禁止になっており、残念ながら滝に打たれたりすることはできない。もちろん人工の滝だが、3mほどの高さから勢いよく流れ落ちるさまは、なかなか見事だ。
正面は巨石を積み上げて自然の崖を演出しており、田谷の洞窟にあやかってか、ここにも小さな洞窟がある。真っ暗で中は見えないが、しめ縄で祭ってあり、雰囲気はじゅうぶん。崖の上の木々は露天スペースを覆い被すようにして生い茂り、野趣あふれる景観をなしている。
石づくりの露天風呂は日替わり湯で、訪れた日は紫色の「ききょう」の入浴剤。サウナは3帖ほどの広さで室内にテレビあり。露天スペースには水風呂もあったようだが、衛生面で問題ありという保健所の指導により撤去。その代わりとして、90cm角のポリバスに貯めてある水を手桶で汲んで使う、「掛け水」方式。もう少し洒落や工夫はないのか、と思うが。

大船ラドン温泉
源泉/横浜温泉(ナトリウム−炭酸水素塩泉)
住所/横浜市栄区田谷町1459 [地図]
電話/045-851-1526
交通/JR東海道線・横須賀線・根岸線大船駅西口よりバス6分
「洞窟・ラドン温泉前」停前
※大船駅西口より無料送迎バスもあり
国道1号線「原宿」交差点より大船方面へ。「田谷」交差点を北へ。
料金/大人2,100円、小学生1,260円、幼児730円(1歳以上)
(夜間割引)平日:17時以降800円
休日:17時以降1,260円、19時以降800円
※館内着セット不要の場合は150円引き
時間/10:00〜22:00(休日は9:00〜22:00)
(追記-2011/06/28)
6月末日をもって、昭和47年以来39年間に渡る営業を終了。
閉館時の入館料は、大人1,500円、小学生900円、幼児520円
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