那須の珍湯として知る人ぞ知る存在であった老松温泉喜楽旅館は、建物の倒壊が凄まじく、ついに営業を終了。すでに廃墟そのものと化している。そこにきて最近YouTube等で注目を集めているのは雲海閣だ。こちらもまた鄙び系の温泉旅館で、建物は立体的にも平面的にも不思議な構造となっており、あちこち薄暗かったり、破れかぶれな雰囲気が温泉マニアを惹き付ける。
帳場で出迎えてくれるわけでもなく、テレビの音は聞こえるが、それ以外はしーんとしている。帳場に置いてあるトレイにお金を支払うシステムのようで、何枚かの硬貨がチャリンと音を立てたところで、気づいたご主人が裏から顔を出した。「初めて?」の声に頷くと、「温泉は2つあって、階段を降りて、途中右手にあるのが…そのまままっすぐ降りると…」と簡単に説明してくれた。
階段や廊下は薄暗く、ところどころ真っ暗だったり、壁や天井の塗装が剥がれ落ちていたりと、まるで廃墟系アトラクションのようだ。建物は相当の築年数を経ているようだが、ここまで手入れをしないというのは逆にすごい。階段をいちばん下まで降りると男女の暖簾があって浴室。その先にも廊下は続いており、休憩室なのだろうか。障子はすべて破れ、不気味な景色と化していた。
脱衣所にはカゴがあるのみ。浴室の硬い扉を開けると、湯船が2つ並んでいるのみ。源泉の投入量で湯温に差をつけているのか、左側は激熱で青白く、右側は熱めで乳白色。pH2.36の強酸性で硫黄の香りが漂う。観光客に人気の鹿の湯と同じ源泉を使用しており、分湯場から引いている。あまり長くは浸かっていられず、床に腰かけて入ったり出たりを繰り返す。湯治場のような風情だが、窓枠がだいぶ歪んでしまっており心配になる。
先ほどの浴室が地下2階だとしたら、もうひとつの浴室は地下1階。こちらは源泉が異なり、無色透明だが大量の湯の花が沈んでおり、お湯に身体を沈めるとふわっと舞う。そしてこちらはやや適温なので浸かりやすい。窓からは温泉街の道路を見下ろすが、とくに美しい景色ではなく、察しの良い方なら傾斜地に建っていることがわかったかと。
バス停から見上げると建物の構造がなんとなくわかる。旅館の建物は高台に建っており、斜面に沿って階段を設け、バス停前の建物へと通じている。素泊まり(自炊可)の宿としても営業しており、客室は全10室。湯治宿の風情は味わえるが、バリアフリーとはほど遠い。那須湯本は廃墟と化した民家、旅館が多い。殺生石や鹿の湯といった観光スポットもあるし、なによりも那須温泉郷の玄関口でもあるので、活性化に期待したい。雲海閣
源泉/鹿の湯・行人の湯混合泉(単純硫黄泉)、奥の沢噴気泉(単純硫黄泉)
住所/栃木県那須郡那須町湯本33 [地図]
電話/0287-76-2016
交通/東北道那須ICより約11.8��
※無料駐車場あり
料金/500円
時間/9:00〜20:00





















