ゆめみ処ここち湯大和店(大和市福田)スーパー銭湯などの温浴施設は郊外型の立地がほとんどで、車を持たない人にとっては電車とバスを乗り継いで訪れることとなる。最寄駅までの送迎サービスを行っている店舗もあるが、それはほんの一部。例えば電車通勤のサラリーマンが会社帰りにふらっと立ち寄りたいとき、郊外型店舗が不利であることは言うまでもない。施設自体に広大な敷地面積を求められるから仕方のないことだが、「駅徒歩圏にあれば、ちょっと寄り道しても…」という声はよく聞く。そんなニーズに応えるが如く、今年4月12日にオープンしたのが「ゆめみ処ここち湯大和店」である。小田急江ノ島線の高座渋谷駅前という好立地だ。

高座渋谷は駅前周辺で再開発が進んでおり、新しい街並みに変わりつつある。ここち湯は西口に新築された複合型ビル「IKOZA」の5〜7階フロアを占め、同ビルひいては町の核としての存在感を放っている。運営するのは相鉄不動産販売で、同社としては4店舗目のオープン。東急不動産から相模原店、瀬谷店の運営を引き継いだことは記憶に新しいが、競争激しい温浴業界にあって、相鉄不動産のこうした攻めの展開は注目に値する。店舗面積もこれまででいちばん大きく、しかも3フロアを有している。県内でも指折りの大型店舗だと言えるだろう。

テナント専用のエレベーターで5階へ。L字型のアプローチは凝った内装とほのかな照明で高級志向を演出。ワンフロアを使用しており、エントランスの扉もなく、真正面にフロントがある。退館時精算のため、ここで受け取るのはリストバンドのみ。別途料金の岩盤浴とリクライニングルームを利用するためには、岩盤浴カウンターで受付をする。それぞれに専用ウェア(岩盤浴には専用の敷きタオルも)があり、そのバッグを受け取ったら7階へ。脱衣所のロッカーの大きさは一律だが、岩盤浴とリクライニングルームの2つのバックを仕舞うと、すでに半分が埋まってしまうのだ。何らかの対処を検討してほしい。いずれにせよ、岩盤浴もリクライニングルームもここで専用ウェアを着用し、移動することとなる。

「天晴れの湯」「木立の湯」と名付けられた浴室は、男女日替わり制。これまで2度訪れたのだが、いずれも「天晴れの湯」だった。西側を向いており、丹沢の山なみや晴れていれば富士山を遠望するのは「天晴れの湯」、北側を向いており、眺望よりも雰囲気を重視したのが「木立の湯」。パンフレットなどを見る限り、湯船やサウナの種類に変わりはないようだ。

浴室内から一段低くなって露天スペースがあり、大きな窓ガラスで仕切っているだけなので、浴室内にはたくさんの光が差し込み、また眺望や開放感も楽しめる。最近訪れたときには全ての窓を開け放っていて、半露天の気分をも味わうことができた。心地よい風が室内に入ってくるのも、高層階の施設ならではだろう。モノトーンのタイルでまとめられた室内には、人工物の植栽も効果的に配置されているほか、ふちを岩風呂風に仕上げた湯船も。室内での人気は炭酸泉で、超微細の炭酸ガスが湯船の表面ではじけ、全身にびっしりと付く。ほかに白湯、寝湯ジャグジー、バイブラ湯、水風呂がある。また、ドライサウナとアロマスチームサウナもあるので、岩盤浴を使用しない人でもしっかり汗をかくことができる。

露天スペースのメインといえば、岩風呂仕様の人工温泉だ。特許技術で温泉の原液を再現しているという。オープン当初は「下呂の湯」だったが、6月13日から「銀山の湯」。どのくらいの周期で変わるのだろうか。銀山の湯はうっすら白濁したお湯で、かすかに硫黄のにおいも漂う。非温泉施設にあって湯船の差別化を図るのであれば、色つきのお湯でないと客は満足しないと思う。この湯船は内部の段差によって、足を伸ばして半身浴が楽しめるように作られている。

色つきの湯船としてはシルクバスもある。白湯の湯船とは上下段のつくりになっており、シルクバスのお湯が流れ落ちるようになっている。不意に大量のお湯があふれてくることもあるので注意が必要だ。磁化還元水といってもピンとこないが、この水を使用した湯船では、時おり「イベント湯」を企画しているようだ。日替わりまたは週替わりでもよいと思うのだが。寝ころび湯とも接しているが、湯船の配置の仕方には気を遣ってほしかった。寝ている人の恥ずかしい部分が、視界に入ってしまうのである。3つある壷湯はそこだけ塀に囲まれており、回り込まないと空いているか否かがわからない。

景色は塀のルーバー部分から眺めることができるが、ルーバーの角度と隙間の大きさには検討を重ねる余地があったはず。もしくは塀を低くするなどの方法も。丹沢の山なみを眺めるならば、むしろ塀の上から見通せる浴室のほうがよい。晴れていれば富士山を遠望するというが、残念ながら過去2回は曇り空。ならば夕日を…とも思うが、その頃は岩盤浴の真っ最中だったりする。露天風呂には屋根を設けていないので、雨の日は楽しさ半減かも。厚木基地が近いこともあって、時おり米軍機が爆音とともに視界を横切る。普段はBGMだったり、浴室と露天スペースの高低差に設けたすだれ状の滝の音が心を落ち着かせてくれるのだが。

ゆめみ処ここち湯大和店(大和市福田)

岩盤浴は5階にある。専用ウェアが利用者の証で、時間や回数の制限はない。いちばん奥の休憩室にはマイドリンク冷蔵庫、入ってすぐのところに貴重品専用ロッカーがある。2つある大部屋のうち、「じわん」と名付けられたほうは誰しもがイメージする岩盤浴の部屋。ヒマラヤ岩塩、ラジウム鉱石、トロンの3つの岩盤タイルが20人分ほど並んでおり、その上に大きなタオルを敷いて横になる。室内は薄暗く、初めのうちはあまり熱く感じないので、目を閉じると眠りに落ちてしまいそうだ。もう1つの大部屋は「ごろん」という名前で、室内全体に麦飯石とゲルマニウム鉱石の床タイルを使用している。テレビが備え付けてあり、各自適当に座ったり寝たりおしゃべりしたりしながら汗をかく、という趣向。韓国のサウナ(=チムジルバン)スタイルだ。たっぷり汗をかいたら、クールルーム、エッセンシャルオイルの香りに包まれた部屋、ごろんと横になれる広い休憩室でひと休み。岩盤浴着がすぐに乾いてくれるとよいのだが、代謝が良すぎるとのんびり休憩もままならない。

リクライニングルームは6階にあって、ここでは岩盤浴と違うウェアを着用する。部屋の半分は琉球畳を使用した広間で、もう半分には個別テレビつきのリクライニングチェアが並んでいる。風呂あがりにのんびり過ごすのは最高の贅沢だろう。

ゆめみ処ここち湯大和店(大和市福田)イベント広場がうまく活用されていないこと、食事処のメニューが少ないことなど、今後に期待したい点はいくつかある。近隣店と比較すると入浴料金自体は決して高いとはいえないが、岩盤浴やリクライニングルームを含め、例えば夕方以降の割引制度があったなら、さらに利用客が増加するのではないだろうか。休日に訪れるならば半日コースだが、現実的に考えれば、入浴+岩盤浴の客はリクライニングルームを利用しないだろうし、その逆もしかり。ちなみに誰しもが無料で利用できる、畳敷きの休憩スペースもあるのだ。仕事帰りなど時間がないときには、入浴+無料の休憩スペースでもじゅうぶんリラックスできる。客の都合に合わせて楽しみ方いろいろ、といった感じだ。駅前という利便性のよさも大きな魅力であり、遠方からでも電車で訪れる価値はあるだろう。

ゆめみ処ここち湯 大和店
住所/大和市福田2021-2 IKOZA-5F [地図]
電話/046-201-0126
交通/小田急江ノ島線高座渋谷駅より徒歩1分
     国道467号線「福田入口」交差点より高座渋谷駅方面へ
     ※無料駐車場あり(3時間以上は超過料金)
料金/(平日)大人800円、子供400円
     (休日)大人900円、子供450円
     ※子供は小学生以下
     岩盤浴は別途700円(小学生以下の利用は不可)
     リクライニングルームは別途250円
時間/10:00〜25:00、年中無休


ゆめみ処ここち湯 海老名店 (⇒記事)
ゆめみ処ここち湯 相模原店 (⇒記事)
ゆめみ処ここち湯 横浜瀬谷店 (⇒記事)

ここち湯のオープン予定を伝える記事
高座渋谷駅前に4月温浴施設がオープンへ