鯖湖湯(福島市飯坂町湯沢)鯖湖湯(福島市飯坂町湯沢)

飯坂温泉は福島県を代表する温泉地で、かつ、宮城県の鳴子温泉、秋保温泉と並ぶ「奥州三名湯」。開湯は古く、日本武尊が東征の折に発見したという伝説も残っている。温泉街は飯坂温泉駅前から広い範囲にあり、摺上川から支流の赤川周辺に大型のホテル、旅館が建ち並ぶ。8軒ある共同浴場は、おもに住宅地に点在している。そのうち温泉街中心部にある鯖湖湯は、飯坂温泉発祥の地とされている。西行法師が詠んだ「あかずして 別れし人の住む里は 左波子の見ゆる やまのあなたか」という歌の、左波子が鯖湖に転じたというのが通説だ。元禄2年(1689)には、松尾芭蕉が「奥の細道」の途中に立ち寄ったという。

鯖湖湯(福島市飯坂町湯沢)鯖湖湯(福島市飯坂町湯沢)

木造建築としては日本最古の共同浴場(明治22年築)だったが、当時の面影を留めて平成5年に建て替えられた。共同浴場としての規模は大きく、どっしりとした風格が観光客の目を惹きつける。内外装にヒバ、ケヤキ・ヒノキの木目をそのまま生かし、屋根は銅版葺。まだ新しさを感じさせるが、これから数十年の歳月を経るにしたがい、渋く味わい深いさまへと変わっていくのだろう。自動券売機だけが現代風だが、脱衣所と浴室が仕切りもなく一体となった空間などは、古きよき共同浴場の雰囲気を再現したということだろう。

鯖湖湯(福島市飯坂町湯沢)飯坂温泉街の新名所として旧堀切邸が今年5月1日にオープンしたが、それを記念して鯖湖湯では5日までの限定で無料開放を行っていた。なんとありがたいことか、しかし多くの観光客でごった返していた。脱衣スペースには棚とコインロッカーもあるが、空いている箇所を探すのにひと苦労。浴室中央に設けられた湯船は、まさに芋洗いの状況。4帖ほどの大きさなので足をかがめながらの入浴となった。源泉は熱めだが、(観光客の利用に配慮して)42〜43℃にするようにしましょう、との注意書き。適宜加水して調整せよ、と。ただし客の出入りが多いため、加水せずとも適温に感じられた。浴室内にカランはなく、洗面用具を置く棚と掛け湯に使う湯溜が2ヶ所あるだけ。簡素な設備こそ共同浴場本来のスタイルだといえる。

鯖湖神社鯖古湯に隣接して、樽を模した源泉貯湯塔、足湯「あ〜しあわせの湯」、鯖湖神社が並んでいる。昔ながら風情を保った湯治宿や個人商店も建ち並び、周辺を散策してみるのも楽しい。駅まで近いのも魅力のひとつで、せわしない旅だけどちょっとひとっ風呂という時におすすめしたのが、ここ鯖湖湯だ。

鯖湖湯
源泉/飯坂温泉(単純温泉)
住所/福島市飯坂町字湯沢32-イ [地図
電話/024-542-2121(パルセいいざか)
交通/福島交通飯坂線飯坂温泉駅より徒歩6分
料金/大人200円、小人100円(1歳以上12歳未満)
時間/6:00〜22:00、毎週月曜日(祝日の場合は営業)

飯坂温泉オフィシャルページ(飯坂温泉観光協会)

飯坂温泉の共同浴場
※いずれも大人200円・小人100円、6:00〜22:00
鯖湖湯        月曜日定休
天王寺・穴原温泉 水曜日定休
仙気の湯      木曜日定休
八幡の湯      火曜日定休
大門の湯      木曜日定休
十綱の湯      木曜日定休
切湯         月曜日定休
導専の湯      金曜日定休


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