小山湯(横浜市中区石川町)小山湯(横浜市中区石川町)

横浜の元町といえば「ハマトラ」を生んだオシャレ横浜の象徴ともいえる街。根岸線の石川町駅からみなとみらい線の元町・中華街駅にかけての一帯にはブティックが軒をつらね、独自の文化圏を形成している。しかしその一帯を外れると、例えば新山下などには昔ながらの住宅街も見られるし、小山湯のある石川町駅西側には庶民的な民家とマンションが混在している。

小山湯(横浜市中区石川町)小山湯は駅徒歩3分の好立地で、マンションの1階にある。天井を高くとるために地下を掘り下げているので、通りから階段を下っていく。マンションの南側に大きな看板が出ているが、通路で北側にも抜けることができ、北側にも小さな看板がある。そして通路の真ん中に男湯と女湯の暖簾が出ている。こうした入口の設け方は番台式である証拠だが、伝統的な番台の形式ではなく、一見するとカウンター式。おばちゃんは男湯のほうを向いて座っているが、背中を向くと女性客の対応もできるような仕組み。販売品の洗面道具などがカウンターにぎっしりと並び、さらにはロッカーの上にも下着類を展示して販売している。

ビールやハワイウォーターの小型サーバーもあり、ジュースや牛乳の自販機、マッサージチェア、なぜかアーケード版ゲーム機も。テレビの前にはタバコの集煙機があって、そのまわりをガーデンチェアが囲んでいる。しかし神奈川県の条例によって今年4/1以降、銭湯では全面禁煙。たんなるテーブルの役割でしかない。決して広いとはいえない脱衣所は、こんな感じでやたらと物が多い。

浴室は5-5の島式カランが2列と間仕切壁側に7つのカランが並ぶ。すべてに固定式シャワーが付き、ほかに立ちシャワーも1つだけある。湯船は2つあって、ますは4帖ほどの大きさ。弱々しい噴流のジャグジーが4つ付いている。もう一方は2帖ほどの日替わり湯で、この日は「紫根」という、文字通り青紫色のお湯。そしてどちらもお湯はぬるめ。湯船のふちには桜の造花が飾られている。浴室は白をベースに緑のタイルでアクセントととしているだけで、特徴のない室内空間だが、季節感を感じさせるこの演出には好感が持てる。安価かつ簡単なことなので、よその銭湯も真似するべきだと思う。そして無料で利用できるスチームサウナ。1.5帖ほどの空間にガーデンチェアが3つ並んでいる。ぬるいがタダなので文句は言えない。その他、女湯では土日のみフルーツ風呂を開催中だという。

青いポロシャツを着たおやじさんは右へ左へと動き回って作業している。そうかと思えば常連さんと談笑していたり。すぐ近くに都会が接しているというのに、小山湯はまだ人情銭湯の風情が残っている。おやじさんのポロシャツの背中には「Japanese Spa 小山湯」。かっこいい。そしておやじさんの趣味なのか、アイスホッケーのリーグ戦のポスターなどが貼ってある。マンションに建て替えられているが、じつは明治19年(1886)創業で、現存する県内の銭湯ではいちばん古い銭湯。しかし、店内の雰囲気やサービスの内容では若々しい発想を感じさせる。駅に近いことも魅力だが、午前11時から営業している点も貴重だ。実際に昼間から大勢の客で賑わっていた。

小山湯(神奈川県浴場組合)
小山湯(横浜市浴場協同組合)

小山湯
住所/横浜市中区石川町3-106-4 [地図
電話/045-641-5708
交通/JR根岸線石川町駅元町口より徒歩3分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/11:00〜23:00、年中無休