まずは下の湯から入浴することにした。荒れた岩場のあちこりから湯煙が上がり、さらには湯だまりもあった。都市部なら観光の呼び物して整備するところだが、ここでは自然のままの姿をさらしている。先ほどまでのひっそりとした谷間の風景とのギャップに驚くばかり。そして、青みがかった乳白色のお湯に、期待感はおのずと高まってくる。下の湯はこじんまりとした内湯のほかに露天風呂。もとは女性用の浴室のみ露天風呂が設けられていたが、昨年男性用の浴室にも完成した。湯につかりながら景色を見渡すと、のどかな山の風景にぽつんと1軒、茅葺き屋根の建物(離れ・1泊3万円)が見える。素晴らしき田舎の風景!の一言だが、離れからこちら側を見下ろしたらどんな気分だろうか? 素晴らしき田舎の湯治場!の一言だろうなぁ。
次は混浴の上の湯へ。内湯は薄暗くてひなびた風情だが、それと対照的に露天風呂は明るく開放感がある。下の湯と同じく、荒涼とした岩場が広がり、遠くに雪山の尾根を見渡す。遠くから木樋で源泉を引いているようだが、湯船への給湯は止まっていた。ぬるくて長湯にはもってこいだと思ったが、どうやら湯の花で樋が詰まっていたらしい。作業に当たっていた番頭さんによると「最近は湯の花の量が多くて、四苦八苦している」とのこと。なるほどお湯の中にも多量の湯の花が舞い、手で掬えるくらいに沈殿している。黒湯温泉でいちばん温泉度が濃い感じがした。
やがて熱めの源泉がちょろちょろと流れてきた。後日、テレビの旅行番組でこの番頭さんを拝見したが、どうやら黒湯温泉には欠かせない存在であるらしい。東北人の朴訥とした人柄と温和な表情が印象的だ。そんな番頭さんのお気に入りスポットといえば、乳頭山の登山道そばにある一本松温泉。乳頭温泉郷の数にもカウントされていない、ただの湯だまりにして、まさに秘湯の趣。お湯にこだわりが人一倍強い番頭さんが選ぶのだから間違えがない。とにかく番頭さんの印象ばかりが強く残った温泉だった。
・乳頭温泉組合
黒湯温泉
源泉/黒湯温泉(単純硫化水素泉・酸性硫黄泉)
住所/秋田県仙北市田沢湖田沢生保内字黒湯沢2-1 [地図]
電話/0187-46-2214
交通/JR秋田新幹線田沢湖駅よりバス約55分
「休暇村」または「乳頭温泉郷」停から各徒歩約20分
料金/大人500円、小学生250円
時間/7:00〜18:00、4月中旬〜11月上旬









