奥多摩といえば日原鍾乳洞と奥多摩湖である。しかし神奈川から奥多摩は遠かった。「多摩」という地域自体も広大だが、さらに「奥多摩」というとどれだけ奥まっているんだ?というくらい遠くて、奥に行けば行くほどのんびりとした景色になっていく。ここは東京か!?と気が遠くなってくるあたりに奥多摩町はあった。駅前は意外と商店が密集し、さらに駅裏には奥多摩工業という会社の巨大なコンビナート。貨物の引込線跡なども見える。奥多摩の大自然の中で、ここだけは異質な雰囲気だった。そんな景色を横目に見ながら、日原街道で鍾乳洞を目指す。奥多摩駅からは約10kmの道のり。

車1台しか通れない山道で、V字になった谷底には多摩川が流れている。カーナビではところどころに軌道敷きが表示されており、道中では高所に架かった橋の上を無人のトロッコが走っている様子を目にすることができる。石灰岩を採掘し、工業用の炭酸カルシウムを精製する奥多摩工業のトロッコで、ところどころに採掘中なのか真っ白の山が見える。

日原の集落を過ぎてしばらく走ると、日原鍾乳洞に到着。周囲を取り囲む山々の標高はさほど高くないが、自然豊かなロケーションで、足元には沢が流れている。懐かしい感じのする食堂兼土産物店の先にある階段を下りると、チケット売り場。ひも付きのしおりタイプの入場券もいまどき懐かしい。沢にかかる橋を渡ると鍾乳洞の入口。

素掘りのトンネルのような直線通路がしばらく続くが、突き当りを右に折れると鍾乳洞の雰囲気になる。とはいっても、真っ白の鍾乳石のつららがあって…というわけではなく、かつての水流や侵食によってできた窪みや空間が奥まで続いている。関東随一のスケールを誇るが、いかんせん観光鍾乳洞であるため、鍾乳石は黒ずんでいて幻想的な世界とはほど遠い。かつては修験道の聖地として崇められていた名残か、弘法大師学問所、地獄谷、三途の川、あみだの原、十二薬師など宗教的な呼び名の箇所が多く、1つ1つの見どころにはバス停のような丸型のプレートが付けられている。大空間上部の賽の河原では小石が積み上げられていたり、縁結び観音ではおかげ参りをするほど熱心な人もいるようで、いまでも信仰の対象としての役割を果たしている。

同じ道を戻り、途中からコースは昭和37年に発見されたという新洞へ。その入口には「松前口」というプレートがあり、もしや…?と思ったら案の定そうだった。発見したのは東海大学の探検会で、創立者松前重義先生の名前にちなんでのもの。そもそも、もしや…?と思うのは大学や付属校の出身者だけだろうが(笑)。この新道は縦に続く大空間で、日原鍾乳洞の最後にして最大の難所。はしごのように急な階段を3〜4階分上っていかなくてはならない。しかしその上の空間はフェンスで保護されており、つららや石筍など鍾乳洞の雰囲気が満喫できる。

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日原鍾乳洞
住所/東京都西多摩郡奥多摩町日原 [地図
電話/0428-83-8491
交通/JR青梅線奥多摩駅よりバス
     平日は鍾乳洞行き(35分)徒歩3分
     休日は東日原止まり(30分)徒歩25分
     奥多摩駅前より都道204号線(日原鍾乳洞線)を約10km
料金/大人600円、中学生400円、小学生300円
時間/(4/1〜11/31)8:00〜17:00
     (12/1〜3/31)8:30〜16:30

日原観光案内(日原保勝会)