「田んぼのど真ん中、プレハブの湯 口コミで人気」という記事が、平成21年1月21日の毎日新聞に掲載された。長野県栄村の百合居温泉を紹介したもので、平成7年に湧出し、老人ホームの使用予定が取り止めとなるも、村の予算がないためプレハブのままだという。村民憩いの場でありながら、物珍しさから口コミでも人気が出始めているという。いつか訪れてみたいとこの記事をプリントしていたが、ようやく3年越しの訪問となった。

栄村は長野県の最北に位置し、野沢温泉村や新潟県津南町などに隣接する、人口2000人余りの小さな村。東日本大震災の翌日に起きた長野県北部地震では甚大な被害を受け、1年以上経った現在は道路や橋の補修工事が行われていた。苗場山や鳥甲山などの登山、キャンプ、冬はスキーが観光の目玉だが、切明温泉川原の湯(⇒記事)で紹介したように、秋山郷など村内に点在する温泉も見逃せない。百合居温泉もそのひとつだ。

百合居温泉仮設共同浴場(長野県栄村堺百合居)新聞記事では「横倉駅近くの田んぼの真ん中に、ひっそりと建つプレハブ小屋がある」と書かれていたが、これでは道案内が不親切だ。まず横倉駅を目指すのは正解だが、このあたりは民家が点在しており、田んぼが広がる農村風景は千曲川の向こう側。百合居温泉は農協の裏手にあり、「田んぼのど真ん中」という表現はやや大げさに感じたが、建物は本当にプレハブだった。群馬県みなかみ町の三峰の湯(⇒記事)もプレハブだったが、こちらはさらに簡素な無人施設。料金箱に200円を入れる。

百合居温泉仮設共同浴場(長野県栄村堺百合居)正式名称を「百合居温泉仮設共同浴場」といい、脱衣所は日曜大工で作ったかのような棚とカゴ、椅子があるのみ。浴室は板を打ち付けた壁にコンクリートの床と湯船。温泉の成分によって変色し、鉄骨は腐食も進んでいる。昔からある共同浴場かと錯覚してしまうが、2つあるカランはシャワー付きの混合栓。温泉の湧出と同じ年に建物が完成しているから同然なのだが。

百合居温泉仮設共同浴場(長野県栄村堺百合居)源泉は無色透明で、循環や消毒をせずにかけ流ししている。かすかに油くささを感じ、お湯の表面には大きな膜がいくつも浮いていた。しかし肌ざわりはつるつる系。

ちょっと熱めに沸かしているが、源泉は最新の調査(平成22年)では泉温33.0度。建物内には49.8度(平成7年)と28度(不明)の表記もあるが、大きくばらつきがあるのはどういうわけか。

百合居温泉仮設共同浴場(長野県栄村堺百合居)百合居温泉仮設共同浴場(長野県栄村堺百合居)百合居温泉仮設共同浴場(長野県栄村堺百合居)

冒頭の新聞記事の話に戻って、地元の方々とのふれあいでもあればさらに印象深いのだろうが、終始一人きり。それもまた贅沢な経験なのだろうが。

百合居温泉仮設共同浴場
源泉/百合居温泉(ナトリウム−塩化物泉)
住所/長野県下水内郡栄村大字堺百合居1226 [地図
交通/JR飯山線横倉駅より徒歩13分
     ※駐車場2〜3台分あり
料金/200円
時間/12:00〜20:00(12〜4月は12:00〜19:00)
     毎週火曜日定休

栄村観光協会