まだ日も暮れていない時間だというのに大勢の客が訪れていた。建物の正面の駐車スペースは満車状態だったから、この集落だけでなく近隣からの客も多いようだ。素朴な風情の建物は中央に廊下を設け、その右側に受付がある。いちごや海苔といった地場産品、さらにはツナ缶が並んでいたが、お土産に買っていく人が多いのだろうか。左側には浴室があるのだが、男湯は奥に位置するため、脱衣所入口はカーテンのみ。棚と流しがあるだけで、いたってシンプル。
浴室にはカラン4つと湯船1つ。すでにすべてのカランが埋まり、1.5帖ほどの湯船にも4人がつかっている。常に入れ替わりがあるのはいいけれど、窮屈な感じは続く。これから夜になるにつれてもっと混み合うという。白岩の湯も混んでいたが、それには近隣住民の温泉好きもあるだろうし、なにより200円という入浴料の安さだろう。「今日はぬるいね」なんておじいさんは言うが、客観的に言えば適温の範疇。しかしみんな好き勝手にコックをひねり、湯量で温度を調整している。おじいさんいわく「白岩の湯はぬるくて嫌だ」。2つの共同浴場にはそれぞれ根強い支持層がいて、地域を二分しているのだろうか。浴室にはモザイクタイルで花咲か爺さんが描かれている。女湯は浦島太郎なのだとか。
周囲に観光すべきスポットはないため、多くの人は上白岩地区を素通りしてしまうだろう。もうひとつの共同浴場「白岩の湯」は県道沿いにあるため、その存在に気づく人がいるかもしれないが、小川温泉共同浴場を知る人はよっぽどの温泉マニア。ひっそりと営業しているのかと思いきや、地域の常連ばかりで面食らうが、だからこそ共同浴場めぐりは面白い。
小川温泉共同浴場
源泉/白岩温泉(ナトリウム−硫酸塩泉)
住所/静岡県伊豆市上白岩1268-2 [地図]
電話/0558-83-2357
交通/国道138号線修善寺より県道12号線
「資料館前」交差点より大見川方面へ約600m
料金/200円
時間/14:30〜20:30、毎週木曜日定休
⇒白岩温泉白岩の湯