満願寺満願寺温泉のある熊本県南小国町は九州の中央部、熊本県の東北部にあり、大分県と接する県境の町。日田と阿蘇、日田と竹田を結ぶ日田往還が町内を走るが、満願寺温泉があるのはそこから逸れた道。車通りも人通りも少ない。源泉は志津川という小川の河原から湧き、地区には旅館、民宿、ペンションが各1軒ずつあるだけの小さな温泉場。満願寺というのはお寺の名前で、立護山満願寺は真言宗の寺。文永11年(1274)の元寇の役に際し、日本国を守護するために毘沙門天を本尊とし、鎌倉幕府の執権・北条時頼の弟で鎮西奉行の北条時定が建立したという。そして満願寺の隣にあるのが満願寺温泉館である。

満願寺温泉館温泉館と名前は立派だが、地元の志津地区自治会が管理・運営する共同浴場である。入浴料は入口脇の料金箱に入れる仕組み。防犯カメラを設置しているのが悲しいが、無人なのをいいことにタダ風呂する観光客もいるのかも。こんなのどかな町にまでカメラの監視があるなんて、これも現代社会の縮図というべきか。

満願寺温泉館入口の脇には簡単なつくりの休憩所があるが、かつてはここで料金徴収をしていたのであろうか。そしてすぐ左手に「男湯」の看板があったので、早速入ってみる。2帖ほどの脱衣所には数人分の棚があるだけ。浴室も2帖ほどの広さで、淡い場のスペースなど半帖分も無い。カラン1つと小さな鏡があるだけで、いたってシンプルなつくり。湯船には無色透明のお湯があふれ、室内には湯気が立ち込めている。素っ気ないタイル張りの浴室で、個人専用もしくは家族風呂かと思わせるほどに狭い。

湯上りに館内の張り紙を眺めていると、奥にもう1つ浴室があることを知った。そちらはもっと大きくてカランが3つ、湯船も2つもあったとのこと。熱めの湯船は2帖ほどの大きさ、ぬるめの湯船は4帖ほどの大きさ。ゆったりとしたこちらの浴室を利用する人のほうが多いだろうと思う。

NHKの番組「ふだん着の温泉」によると、地元の志津地区は79世帯約250人の集落で、古くから住む世帯のほとんどは家にお風呂がないのだという。夕暮れ時とあって地元の方々がひっきりなしにやって来るが、当然皆さんは顔見知りどうし。お風呂が井戸端会議の場であるようだ。いいなぁ、こんな生活も。

満願寺温泉館
源泉/満願寺温泉(単純温泉)
住所/熊本県阿蘇郡南小国町大字満願寺 [地図]
電話/0967-42-1111(南小国町役場)
交通/JR豊肥本線阿蘇駅よりバス40分「満願寺入口」停下車
料金/300円
時間/6:00〜22:00


満願寺温泉-露天風呂満願寺温泉館の並びには河原に面して公共の露天風呂がある。背後には温泉旅館があり、一応の屋根があるので目隠しにはなっているものの、それ以外からはぐるりと丸見え状態。川の対岸には普通の民家が軒を連ね、普通の日常風景が広がっている。地域の洗い場としての利用が主であるのか、鍋や食器を洗いにくる主婦の姿も見られた。そう考えるとここで入浴するのにはかなりの勇気が必要だ。

南小国町観光協会
満願寺温泉オフィシャルサイト
NHK「ふだん着の温泉」(満願寺温泉・2006年10月22日放送)