旅館天下茶屋(相模原市相模湖町千木良)相模湖周辺には陣馬の湯や美女谷温泉など、秘湯の趣を残す温泉宿が点在している。弁天島温泉もそのうちの1つで、相模湖の東方に位置する一軒宿。当地の歴史は古く、「相模風土記」によれば、景観がよく似た京都嵐山を模して地名が付けられたのだという。天下茶屋の下に流れる桂川(相模川上流を指す)、対岸の嵐山はそのままの名前だし、千木良(ちぎら)は千本松原を、相模湖町の旧名である与瀬は八瀬に倣ったのだという。弁天島といえば相模川の河畔を指すが、ダム湖としての相模湖を建設した影響なのか、そこに島はなく、キャンプ場となっている。

旅館天下茶屋(相模原市相模湖町千木良)旅館天下茶屋(相模原市相模湖町千木良)国道20号線沿いに看板と駐車場があるのだが、実はここから先が遠い。相模川が流れる谷底へと坂道を下りていくのだ。とは言っても相模川は見えず、「山火事注意」の看板の立つ文字通りの山道。雑木林の茂みを抜けていくと、やがてコの字に建つ旅館が見えてくる。世俗とは隔離されたかのような立地にひっそりと佇んでいるが、玄関先の薄暗さが気になる。「もしかして定休日?」という不安が募るが、単に電気を点けていないだけであった。館内に置いてあったチラシには「純和風割烹旅館」とあるものの、申し訳ないがそんな印象は持たなかった。がらーんとした館内は明らかに大衆的で、個人旅行で訪れた客などは戸惑いを感じるかもしれない。「合宿・ゼミ研修での御利用 1泊2食付6,000円〜」なんてあるが、まさしくそんな雰囲気だ。

旅館天下茶屋(相模原市相模湖町千木良)浴室は増築部分の別館手前側にあった。宿のおばちゃんいわく「若いお兄ちゃんが入ってるよ」とのこと。玄関に並んでいたスニーカーの4人組のことか。おばちゃんには「わしゃ若くないのかい!」と言ってやろうかと思ったが(笑)。平日の真っ昼間に相客があるとは想像していなかったが、どうやら4人組も同じ考えだったらしく、浴室の扉を開けたらかなり驚いた顔をしていた。

男湯は「見晴らし風呂」と名付けられているが、窓の向こうは一面の雑木林。奥行のある景色を期待していたし、換気が悪くて湯気で曇っているのも残念だった。肝心の湯船は4帖大のタイル張り。お湯は循環式で、ちょろちょろと注がれている。弁天島温泉とはいうが、分析表などの掲示はなく、その泉質は不明。肌ざわりやにおいなどに温泉らしさは感じられなかった。洗い場にはカランが3つあって、旅館にしては珍しく、お湯と水の蛇口のみ。しかもお湯はちょろちょろ程度しか出ない。じれったいので湯船から直接汲み湯するが、なんだかやるせない気分にもなる。

女湯は「天明檜風呂泡の湯」といい、館内の奥にある。チラシやホームページの写真はきれいに撮影されているが、見晴らし風呂と同様に写真と現実のギャップは多少あるのかもしれない。割烹旅館というからには料理自慢なのだろうし、学生の合宿やゼミ、はたまたハイキングついでの利用もあるのかもしれない。人里離れた一軒宿という環境、そのせいか世間にあまり知られていないという点で、神奈川県では希少な存在だ。

旅館天下茶屋
源泉/弁天島温泉(泉質不明)
住所/相模原市緑区千木良1270 [地図
電話/042-684-2650
交通/JR中央本線相模湖駅よりバス12分「千木良」停徒歩5分
料金/1,050円
時間/10:00〜18:00