八ツ場ダムの問題で全国的に名が知れ渡ることとなった川原湯温泉。2009年度の本体着工を目前にして人気が再燃したかと思えば、民主党政権下では一転してダム建設の工事中止を明言。ダムの底に沈むとされていた温泉街であるため、すでに転出または廃業した旅館も多く、現地はすっかり寂れてしまっている。地元ではダム建設(温泉街の移転)を望む声が高く、政治の思惑に翻弄された状況下であるが、今後の動向は気になるところだ。

川原湯温泉の歴史は古く、源頼朝が狩りの帰りに発見したのが始まりだとされている。吾妻川南側の斜面に温泉街はあり、現在9軒の旅館が営業している。いずれも新温泉街への移転を前提として営業していたため、ややくたびれた感じは否めず、よく言えば昭和レトロの面影も感じさせる。すでに廃業した旅館などは基礎部分だけを残しており、温泉街を通り抜ける道路から見れば歯抜けのような感じも。小さな温泉街であるが、王湯と笹湯、そして混浴の聖天様露天風呂という共同浴場が点在する。佇まいやロケーションで個性の異なる3つの施設だが、今回は聖天様露天風呂をご紹介したい。

聖天様露天風呂(群馬県長野原町川原湯温泉)聖天様露天風呂(群馬県長野原町川原湯温泉)聖天様露天風呂(群馬県長野原町川原湯温泉)

温泉街の東、山水という旅館わきにある階段を上っていく。通りの向かい側にあるのは、“盆栽とお食事”という不思議な組み合わせの「乃久ち」という店。小さな看板が目印だ。木造の簡素な建物で、棚だけの脱衣所と湯船が1つあるのみ。無人施設なので、入浴料の100円は料金箱に入れるのだが、100円玉でないと鐘が鳴らない仕組み。風呂のまわりは地域の子供たちが清掃しており、入浴料金の一部が活動資金に充てられているという。

聖天様露天風呂(群馬県長野原町川原湯温泉)源泉は80℃ほどあるらしく、ホースで水を加えながら注いでいる。お湯は無色透明だが、糸くずのような湯の花が舞っている。飲んでみるとほんのり塩気あり。新緑には早い時期だったが、枯れ枝の向こうには吾妻川の対岸の山の景色が見える。ダム建設のため、中腹まで法面保護工事がなされている。露天風呂の東側の谷底を流れる吾妻川の支流では、いまでもダム建設の関連工事が行われており、トントントン…という作業の音が響き渡っている。また、時おり電車の走る音も聞こえてくる。「ダムは不要、ダム工事が必要 自民党、国交省」という落書きは、地元の人にどう映るのだろうか。

聖天様聖天様聖天様(聖天神社)は30mほどさらに高台にあり、夫婦和合や子授けの神として崇められている。ここでも男根や女性器を模った木像が並べられており、毎年5月にはお祭りが行われているという。

聖天様露天風呂
源泉/川原湯温泉(カルシウム・ナトリウム−塩化物・硫酸塩泉)
住所/群馬県吾妻郡長野原町川原湯温泉 [地図
電話/0279-83-2591(川原湯温泉観光協会)
交通/JR吾妻線川原湯温泉駅より約10分
     関越自動車道渋川伊香保ICから国道17〜353〜145号経由で約40km
     ※川原湯温泉街に無料駐車場何ヶ所かあり
料金/100円
時間/(12月〜3月)7:00〜19:00、(4月〜11月)7:00〜20:00

(追記-2013/9/4)
聖天様露天風呂は八ッ場ダム建設のため、2013/6/30をもって閉鎖されました。



王湯(群馬県長野原町川原湯温泉)王湯 ⇒記事
川原湯温泉のシンボルというべき共同浴場で、源氏の紋「笹竜胆」が目印。別棟には露天風呂を備えている。
料金/大人300円、子供200円
時間/10:00〜18:00、1/1・1/20は休み


笹湯(群馬県長野原町川原湯温泉)笹湯 ⇒記事
聖天様露天風呂の看板の斜向かいにある階段を下っていく(消火栓が目印)。昔ながらの風情を残している。
料金/大人300円、子供200円
時間/10:00〜17:00

川原湯温泉観光協会



川原湯温泉川原湯温泉川原湯温泉
川原湯温泉やんば館やんば館
やんば館やんば館やんば館
やんば館やんば館やんば館
やんば館やんば館やんば館

写真は川原湯温泉街、八ツ場ダム広報センター「やんば館」、建設中の橋梁など。
吾妻線の上に見えるのは、付け替え道路の国道145号線。立派な橋梁は県道と国道をつなぐ予定。

八ッ場ダム広報センター「やんば館」(国土交通省八ッ場ダム工事事務所)
住所/群馬県吾妻郡長野原町大字林1593-3 [地図
電話/0279-82-0279
料金/無料
時間/9:30〜16:30、年中無休(12/29〜1/3は休館)