旅は哲学ソクラテス

興味があるのは風呂屋めぐりとベイスターズです。それ以外のことにはあまり興味がありません。
日帰り温泉・スーパー銭湯・町の銭湯・共同浴場・サウナ・健康ランド・野湯など守備範囲は広めです。
行動範囲は神奈川を中心とした1都3県と静岡、山梨です。

七沢温泉郷

元湯玉川館(厚木市七沢)

元湯玉川館(厚木市七沢)数軒の旅館が点在する七沢温泉にあって、最も奥に位置するのが元湯玉川館だ。山の緑に調和した佇まいは他の旅館と趣を異にし、七沢のなかでも根強い人気を集めている。明治45年の創業以来、多くの文化人が訪れており、漫画家・田河水泡の「のらくろ」シリーズは、一部が玉川館で描かれたという。

敷地は奥行きがあり、本館より渡り廊下を経て浴室に行く。山は間近に迫り、鬱蒼とした木々が建物を覆い尽くそうとしている。こんな野趣あふれる雰囲気が都会の客を虜にする要因か。館内にはカフェもあるので、湯上りは景色を眺めながら過ごすのもいいし、囲炉裏のある休憩室で和風旅館の趣を感じるのもいい。

元湯玉川館(厚木市七沢)浴室は4帖大の内湯とカラン6つがあるのみで、露天風呂はない。旅館の規模のわりにはこじんまりとした印象を受けたが、室内の2面がガラス張りになっており、苔むした石を配置した庭と雑木林の景色が広がっている。晴れた日の木漏れ日も良いが、雨しずくの森の景色なども幻想的で良いのでは、と想像する。板張りの室内に照明がぼんやりと灯り、落ち着いた雰囲気を作り上げている。

源泉は20℃の鉱泉で、pH10.1の高アルカリ性。成分を満たさず、温泉法の温泉には該当しないというが、七沢のほかの湯と肌ざわりなどの点についてあまり変わりはない。あえて言えばローションで包み込むようなすべすべ感より、つるつる感の方が強い気もするが。カランから出るお湯のほうがむしろすべすべ感あり。湯船は総檜で、黒い漆で仕上げている。つるつる滑るのは泉質のせいだけではないようだ。

旅行番組で紹介されたり、ドラマのロケ地として使われたりしているという。東京や横浜から約1時間という立地にありながら、本格的な山あいの風情を体感できる点が魅力なのであろう。

元湯玉川館
住所/厚木市七沢2776 [地図
電話/046-248-0002
交通/小田急線本厚木駅(厚木バスセンター)よりバス30分「七沢温泉」停前
     または小田急線伊勢原駅北口よりバス24分「七沢病院入口」停徒歩15分
料金/1,000円(1時間)
時間/11:30〜17:00(休前日・休日は原則15:00まで)

中屋旅館(厚木市七沢)

中屋旅館(厚木市七沢)日帰り入浴させてくれる旅館やホテルが増えつつあるが、たいていは宿泊客がチェックインする夕方までの時間帯に限られる。そこにきて七沢温泉の中屋旅館は、日帰り入浴を21時まで受け付けている。近隣の住民にとっては仕事帰りにひとっ風呂もじゅうぶん可能。しかも宿泊客が食事をしている時間帯とあって、風呂は空いているのだ。もちろん宿にとっては、食事の提供などで何かと忙しい時間帯であるはずだが。

以前紹介した福元館⇒記事)を中心としたロータリー状の通りの北側に中屋旅館はある。木造2階建の庶民的な佇まいだが、玄関部分だけは旅館の風情を演出していて、いきなり熊の剥製が出迎えてくれる。館内には狩猟の許可証を掲示しているが、欄間には仕留めたと思われる鹿の角が何本も飾ってある。背後にうっそうとした山を控えているから、熊や鹿は珍しくないのだろう。

中屋旅館(厚木市七沢)玄関先の帳場で代金を支払うと、浴室を案内してくれた。廊下をわずかに歩いたところに内風呂、そしてその先に露天風呂があるという。まずは内風呂から。山なりの地形に建っているためか、浴室の扉を開けると数段下る構造。カラン3つに湯船1つという浴室は、こじんまりとしており、ほかに客がいなくて良かったなぁというのが正直な気持ち。湯船はタイル張りで、ひょうたんを半分に切ったような形。黒くくすんだ壁などを見ても昭和の雰囲気が漂っている。しかしお湯につかってみて、この宿に対する印象が一変。無色透明の源泉は七沢温泉特有の高アルカリ泉で、ぬるっとした肌ざわり。身体にローションを塗ったような不思議な感覚だ。かと思えば、水分が乾くとすべすべになる。余計な設備がないぶん、じっくりと温泉を楽しめるのではないだろうか。

中屋旅館(厚木市七沢)中屋旅館(厚木市七沢)もう一度服を着て、今度は露天風呂へ。長い廊下の突き当たりの先に、簡素な脱衣スペースがある。内風呂でもそうだったが、脱いだ服はそのまま棚に仕舞う。脱衣籠を置かない主義なのだろうか。こちらもカランが3つに岩風呂が1つで、湯船自体は特別大きいとは感じないが、日本庭園を模した空間自体はゆったりとしている。すぐ裏手には山の景色が間近に迫り、効果的なライトアップもまた良し。できれば1人もしくは少人数で静かに楽しみたい。ただひとつ残念なのは、内風呂が循環かけ流しだったのに対し、露天風呂は完全循環式だったこと。ちなみに内風呂同様、カランのお湯も温泉を使用しており、こちらのほうがより温泉らしさを感じさせてくれる。石鹸を流しても、肌はいつまでもぬるぬるとしている。美肌を実感できるはずだ。

今回はあえて空いている時間帯を狙って訪れたのだが、期待以上のお風呂だったので、思いがけず長湯してしまった。レトロな雰囲気の内風呂、野趣あふれる露天風呂といった感じで、1粒で2度おいしい温泉旅館だ。

中屋旅館
源泉/七沢温泉(温泉法の温泉)
住所/厚木市七沢2750 [地図
電話/046-248-0008
交通/小田急線本厚木駅(厚木バスセンター)よりバス30分「七沢温泉」停前
     または小田急線伊勢原駅北口よりバス24分「七沢病院入口」停徒歩10分
料金/1,000円
     入浴+休憩2,500円(2時間)
時間/9:00〜21:00

福元館(厚木市七沢)

福元館(厚木市七沢)昨年は資本家と労働者の階級闘争を描いた小説「蟹工船」がベストセラーとなり、著者でプロレタリア文学の旗手・小林多喜二の名も再び世に知れ渡ることとなった。七沢温泉福元館は小林多喜二にゆかりのある宿として、にわかに注目を集めている。七沢温泉は厚木市西部、東丹沢東麓に位置する。七沢病院からのバス通り(というほど立派なものではなく、のどかな田舎道だが)は、ループ状となって終点を通過する。この中州にあるのが福元館で、福元館を囲むようにしてほかに4軒の旅館がある。うっそうとした山が背後に迫り、旅館と民家以外は何もない静かな温泉地だ。

小林多喜二が「蟹工船」を発表したのは昭和4年。翌年には不敬罪や治安維持法の罪で豊玉刑務所に収容されるが、半年足らずで保釈。その後1ヶ月間密かに滞在したのが福元館で、離れの部屋にて小説「オルグ」を執筆した。福元館はホームページによれば、安政3年(1856)に農業の傍ら浴槽を設けて来客に供したのが始まりで、宿としての創業は明治44年だという。

玄関では厚木の地酒「盛升」の酒樽や鹿の剥製が出迎えてくれる。よく手入れされた和風庭園を囲むようにして建物が建つ。大広間やダンスホールを備えているというから、団体客の宿泊や会合利用も多いのだろう。案内されて大浴場へと行くが、廊下の途中には露天風呂(家族風呂)という看板がぶら下がっている。聞くと、こちらは昼の日帰り利用の時間帯は女湯として利用しており、夜は宿泊者が家族風呂として利用できるという。というわけで、日帰り利用で訪れた男性は内風呂のみの利用となる。ちょっと残念…。

福元館(厚木市七沢)浴室は奥にすぼんだ台形をしており、右手に10個のカランが並び(そのうちシャワーは4つにしか付いていない)、左手に大きな湯船がある。裏側の通りに面しており、大きくとった窓越しには道路をはさんで対面に雑木林が広がっている。とくに風情があるわけではないが、これも丹沢のありのままの景色である。七沢温泉というと高アルカリ泉で、ぬるぬるとした肌ざわりが特徴だが、福元館の場合はぬるぬるよりツルツルに近い感じ。お湯は循環ろ過しており、微妙に濁っている。脱衣所に掲げられた分析書によると、掘削深度13mで泉温21.7℃、pH10.0とのこと。広くて明るい湯船は気持ちがいいけど、意外と間が持たない。これで1,000円はちょっと高い気がする。

退館時にはフロントにいたおねえさんが蜜柑を1つくれた。地元で採れたのだという。温泉について印象に残ることはとくになかったが、こうしたさりげない優しさが嬉しい。

福元館
源泉/七沢温泉(単純温泉)
住所/厚木市七沢2758 [地図
電話/046-248-0335
交通/小田急線本厚木駅(厚木バスセンター)よりバス29分「高旗観音」停徒歩1分
     または小田急線伊勢原駅北口よりバス24分「七沢病院入口」停徒歩10分
料金/大人1,000円、小人500円
時間/11:00〜15:00

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