湯布院の温泉街より県道617号線で北へ走っていくと、次第に高原リゾートの雰囲気となる。しかし途中で分岐した県道616号線は大分自動車道と並行するような格好だが、周囲は何もない寂しい道。不安になりながらもしばらく走ると視界が開け、カーナビが示すのは中腹より噴煙を上げる山の方角。
塚原温泉は標高1,045ｍの伽藍岳の南麓に湧く温泉で、「火口乃泉」とは読んで字の如くの意味。12世紀の頃、源為朝が山で狩りをしていたとき、傷ついた鹿が湯だまりで傷を癒すのを見て発見されたという言い伝えがある。斜面を平らに均した広い敷地には受付棟、浴室棟がぽつりぽつりと建っている。これらの建物は最近塗り替えたようにも見えるが、大きさは物置や倉庫のようだ。その背後には白い煙がもくもくと上がっている。遊歩道が整備され火口見学ができるというが、訪れたのが夕方だったため残念ながら時間外。荒涼とした景色を間近で体験できるようだ。
お風呂は内湯と露天風呂があり、別々の料金設定となっている。露天風呂も残念ながら時間外。というわけで内湯に入浴。先ほど触れた物置のような建物は、扉をガラリと開けると中はやはり古いままだった。建築してから何十年建っているのだろうか、くたびれ具合もなかなかのものだ。脱衣所には塚原温泉を紹介した古い新聞記事が貼ってある。別府の奥座敷としての扱い。湯布院側からアクセスしたが、位置的には別府もそう遠くない。
湯船１つしかない浴室もまたかなりのくたびれ具合。コンクリートの壁は黄土色に変色し、まだらに黒ずんでいる。薄い黄緑色のお湯がかけ流し。給湯口からの飲泉もできるので試しに飲んでみると、ビックリするくらいに酸っぱい。濃縮した温かいレモネードのような味。それもそのはずレモンがpH3〜3.5なのに比べ、この源泉はpH1.4とかなりの強酸性なのだ。傷口があればビリビリとした刺激があるのはもちろんのこと、健康な人でも長湯は禁物。酸性度の高さと鉄イオンの含有量は日本で第２位。アルミニウムイオンの含有量は日本で第１位。「日本３大薬湯」「日本３大酸性泉」に数えられているという。これだけ成分が濃く個性のあるお湯だと、なんだかよくわからなくても「効く！」と思ってしまう説得力がある。交通の便は悪いし、ひなびた雰囲気からしても秘湯の類に入るが、この泉質を求めて遠方から訪れる客も多いのではないだろうか。塚原温泉火口乃泉
源泉／塚原温泉（含硫黄・鉄・アルミニウム−カルシウム−硫酸塩泉）
住所／大分県由布市湯布院町塚原1235 [地図]
電話／0977-85-4101
交通／ＪＲ久大本線由布院駅よりタクシー約15分
大分自動車道湯布院ＩＣより県道617号線〜県道616号線
または別府ＩＣより国道500号線〜県道616号線
料金／（内湯）大人500円、小学生以下200円
（露天）大人600円、小学生以下200円
（貸切風呂）60分2,000円〜
時間／9:00〜18:00（6月〜9月は19:00まで）
火口見学は9:00〜17:00
※年末年始休業、冬季の積雪時は臨時休業あり
