旅は哲学ソクラテス

興味があるのは風呂屋めぐりとベイスターズです。それ以外のことにはあまり興味がありません。
日帰り温泉・スーパー銭湯・町の銭湯・共同浴場・サウナ・健康ランド・野湯など守備範囲は広めです。
行動範囲は神奈川を中心とした1都3県と静岡、山梨です。

熊本県

日帰り温泉・スーパー銭湯のオープン&閉店情報(首都圏)
* 佐倉天然温泉 澄流(千葉県佐倉市) -2016/12/18オープン
* のだ温泉ほのか(千葉県野田市) -2016/12/20オープン
* グランパーク・イン横浜(横浜市西区) -2016/12/22オープン
* 海辺の湯 久里浜店(横須賀市久里浜) -2017/1/11オープン
* Gensen Cafe(湯河原町) -2017/2/24オープン
* 西武秩父駅前温泉 祭の湯(埼玉県秩父市) -2017/4/24オープン
* 花湯スパリゾート(埼玉県熊谷市) -2017/4/27オープン
* ひだまりの泉 萩の湯(東京都台東区) -2017/5/29リニューアルオープン
* 湯けむり天然秘湯 龍泉の湯(千葉県成田市) -2017/6/1オープン

黒川温泉神明館(熊本県南小国町黒川温泉)

黒川温泉神明館黒川温泉に着いたときにはすっかり日が暮れてしまった。近年あまりにも有名になりすぎた感があるが、この温泉街のどこに魅力があるのだろうか。周囲を山に囲まれた小さな温泉街は、夜が更けると通りには人影もなくしーんと静まり返っていた。温泉旅館の前はかろうじて灯りがともっているものの、細い路地が多く、寂しい気持ちにさせられる。黒川温泉に夜の娯楽はない。あくまでも旅館で過ごす街であるようだ。

団体客頼みの温泉地は数多くあるが、もともと黒川温泉も例外ではなかった。客は温泉よりも宴会が目的で、不景気になると客足はピタリと途絶えた。それなのに神明館だけは客の数が減ることはなかったという。そして神明館の主人がリーダーとなり、温泉街の立て直し図った。手入れされた庭木を雑木に植え替え、自然の森をつくった。また、すべての宿に露天風呂をつくった。温泉旅館の根本である温泉と露天風呂を重視し、やすらぎの空間演出を行った。…という話は後日知ったこと。黒川温泉では多くの旅館で日帰り入浴をやっており、たまたま訪れたのが神明館であった。

神明館も日本秘湯を守る会の会員宿。玄関先にはそれを示す提灯がぶら下がっていた。日帰り入浴の場合、玄関先で料金を支払い、外の通路から浴室へ行く。調理場の脇を通り、囲炉裏のある休憩所を通り、そこから先は石畳の遊歩道となっている。まずは神明館の名物ともいえる「洞窟風呂」へ。

黒川温泉神明館(穴風呂)主人がノミと金づちで裏庭の石山を掘り始めて3年。いまの形に落ち着くまで10年の歳月を要したという。女性専用洞窟風呂と混浴洞窟風呂(穴湯)があり、長さは全部で30m。どちらも内部の構造は同じで「9」の字のように、途中で枝分かれするが、ぐるりと1周できるようになっている。手掘りのため岩肌は粗いが、高さも幅も十分にあり、ところどころにはゆったりと腰掛けられるスペースもある。洞窟の出入口は低く小さくつくってあるので、内部には湯気がこもっており、スチームサウナのような雰囲気。わずかな照明が内部をぼんやりとしたオレンジ色に照らしている。混浴洞窟風呂の唯一難点を挙げるなら、脱衣スペースが通路と兼用であること。狭いうえに籠の数も少ない。そして外の通路から着替えが見えてしまうことも。とはいえ期待していた洞窟風呂だったが、本格的なつくりに納得。(写真は脱衣スペースから洞窟側を。湯気がすごくてその奥は撮れず)

黒川温泉神明館(岩戸の湯)そして露天風呂「岩戸の湯」。脱衣所こそ男女別だが、こちらも混浴。広い岩風呂で少し浅めの湯船。奥のほうには手彫りと思われる仏像が鎮座している。温泉街を流れる田の原川に面しているが、植え込みが視界を遮っている。神明館の主人によると、
「やすらぎや癒しの時代にあっては露天風呂から眺められる眺望は不要だと断言する。そうではなくて、周りをさえぎりお湯に集中できる造りにすべきだというのだ。」(松田忠徳『温泉教授の温泉ゼミナール』より)
温泉教授の松田氏もこの言葉に「天才的な発想と言うべきだろう」と述べているが、考え方は人それぞれだと思う。とはいえ、木々の隙間から対岸の建物や通行人がちらちらと見えるので、植え込みがないのもおかしいし、これ以上にあるのも不自然なのかも。鉄筋コンクリートの太い柱が何本も立っているのは構造上仕方がないのだろうが、ここまでこだわった中での人工構造物はちょっと残念。無色透明のお湯が掛け流しなのはよいが、ちょっと温いのも残念。

日帰り入浴客は「洞窟風呂」「岩戸の湯」のみだが、宿泊客にはほかに大浴場、家族風呂、女性専用露天風呂がある。ほかの旅館も露天風呂にこだわっているところが多い。このところの黒川温泉の人気によりどの旅館も予約が取りにくいとの噂もあるが、できれば宿泊して湯めぐりを楽しみたい。

山の宿神明館
源泉/黒川温泉(ナトリウム−塩化物・硫酸塩泉)
住所/熊本県阿蘇郡南小国町黒川温泉 [地図
電話/0967-44-0916
交通/国道442号線より黒川温泉街へ
料金/500円
時間/8:30〜21:00


黒川温泉では1,200円で3ヶ所の温泉に入浴できる「入浴手形」を販売している。
入浴時間8:30〜21:00。有効期限は6ヶ月間。(⇒詳細
黒川温泉オフィシャルページ(黒川温泉観光旅館協同組合)



黒川温泉穴湯黒川温泉地蔵湯

黒川温泉の共同浴場
穴湯と地蔵湯の2軒があり、どちらも8:00〜19:00。100円。
(19時以降は黒川住民に限る)


参考:松田忠徳『温泉教授の温泉ゼミナール』光文社文庫、2001年

田の原温泉の共同浴場(熊本県南小国町満願寺)

田の原温泉田の原温泉は黒川温泉より西へ数キロの位置にある。集落の中央に筑後川の源流だという田の原川が流れ、川沿いに温泉旅館が3軒。国道442号線からは逸れている上、集落内の道は狭く、寂しい農村の風景。温泉は鎌倉時代に発見され、以来湯治場として利用されていたという。

この田の原温泉は「男はつらいよ〜寅次郎わが道をゆく」(1978年8月公開・シリーズ21作目)の舞台となった。公共浴場のあたりでポスターを見かけたが、だからといって観光客を呼び込もうという雰囲気もない。ちなみにロケは大朗館という旅館で行われたらしい。

田の原温泉共同浴場田の原温泉共同浴場

川に面して共同浴場が1軒だけあったが、定休日だったのか時間外だったのか、入口のドアは開いていたのに中は真っ暗だった。脱衣所と湯船の仕切りはなく、がらーんとした空間にコンクリート製の湯船があった。南小国町役場のホームページによると、明治以前のものだという。男湯と女湯の間仕切壁はなんだか低いような気もするが、とにかくシンプルなつくりだ。いくつかある注意書きには「午後10時からのご入浴はご遠慮ください」。訪れたのは18時前だったので、定休日だったということか。

田の原温泉共同浴場
源泉/田の原温泉(ナトリウム−炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉)
住所/熊本県阿蘇郡南小国町満願寺
電話/0967-42-1111(南小国町役場)
交通/JR豊肥本線阿蘇駅よりバス45分(産交バス杖立温泉行き)、
     「ゆうステーション」で乗り換え25分(産交バス黒川温泉行き)
     「田の原」停下車すぐ
料金/100円(地区外の入浴客)
時間/不明

南小国町観光協会
「男はつらいよ-寅さんの世界-」(松竹)

満願寺温泉館(熊本県南小国町満願寺)

満願寺満願寺温泉のある熊本県南小国町は九州の中央部、熊本県の東北部にあり、大分県と接する県境の町。日田と阿蘇、日田と竹田を結ぶ日田往還が町内を走るが、満願寺温泉があるのはそこから逸れた道。車通りも人通りも少ない。源泉は志津川という小川の河原から湧き、地区には旅館、民宿、ペンションが各1軒ずつあるだけの小さな温泉場。満願寺というのはお寺の名前で、立護山満願寺は真言宗の寺。文永11年(1274)の元寇の役に際し、日本国を守護するために毘沙門天を本尊とし、鎌倉幕府の執権・北条時頼の弟で鎮西奉行の北条時定が建立したという。そして満願寺の隣にあるのが満願寺温泉館である。

満願寺温泉館温泉館と名前は立派だが、地元の志津地区自治会が管理・運営する共同浴場である。入浴料は入口脇の料金箱に入れる仕組み。防犯カメラを設置しているのが悲しいが、無人なのをいいことにタダ風呂する観光客もいるのかも。こんなのどかな町にまでカメラの監視があるなんて、これも現代社会の縮図というべきか。

満願寺温泉館入口の脇には簡単なつくりの休憩所があるが、かつてはここで料金徴収をしていたのであろうか。そしてすぐ左手に「男湯」の看板があったので、早速入ってみる。2帖ほどの脱衣所には数人分の棚があるだけ。浴室も2帖ほどの広さで、淡い場のスペースなど半帖分も無い。カラン1つと小さな鏡があるだけで、いたってシンプルなつくり。湯船には無色透明のお湯があふれ、室内には湯気が立ち込めている。素っ気ないタイル張りの浴室で、個人専用もしくは家族風呂かと思わせるほどに狭い。

湯上りに館内の張り紙を眺めていると、奥にもう1つ浴室があることを知った。そちらはもっと大きくてカランが3つ、湯船も2つもあったとのこと。熱めの湯船は2帖ほどの大きさ、ぬるめの湯船は4帖ほどの大きさ。ゆったりとしたこちらの浴室を利用する人のほうが多いだろうと思う。

NHKの番組「ふだん着の温泉」によると、地元の志津地区は79世帯約250人の集落で、古くから住む世帯のほとんどは家にお風呂がないのだという。夕暮れ時とあって地元の方々がひっきりなしにやって来るが、当然皆さんは顔見知りどうし。お風呂が井戸端会議の場であるようだ。いいなぁ、こんな生活も。

満願寺温泉館
源泉/満願寺温泉(単純温泉)
住所/熊本県阿蘇郡南小国町大字満願寺 [地図]
電話/0967-42-1111(南小国町役場)
交通/JR豊肥本線阿蘇駅よりバス40分「満願寺入口」停下車
料金/300円
時間/6:00〜22:00


満願寺温泉-露天風呂満願寺温泉館の並びには河原に面して公共の露天風呂がある。背後には温泉旅館があり、一応の屋根があるので目隠しにはなっているものの、それ以外からはぐるりと丸見え状態。川の対岸には普通の民家が軒を連ね、普通の日常風景が広がっている。地域の洗い場としての利用が主であるのか、鍋や食器を洗いにくる主婦の姿も見られた。そう考えるとここで入浴するのにはかなりの勇気が必要だ。

南小国町観光協会
満願寺温泉オフィシャルサイト
NHK「ふだん着の温泉」(満願寺温泉・2006年10月22日放送)
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