芭蕉 月待ちの湯(山梨県都留市戸沢)江戸の大火で住まいを失った松尾芭蕉は、縁あって都留市でしばらくの間を過ごし、「名月の夜やさぞかしの宝池山」という句を詠んだという。芭蕉月待ちの湯は二十六夜山の麓に位置し、市中心部からは山あいを5kmほどの道のり。店名と山名は、旧暦正月と7月の26日に行う「月待ち信仰」にちなむ。阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩の三尊を拝むと願いが叶うのだとか。

芭蕉 月待ちの湯(山梨県都留市戸沢)月待ちの湯、コテージ、遊具広場など、周囲に点在する施設と合わせ、「戸沢の森 和みの里」として観光客を呼び込む。しかし、日がどっぷり暮れてから訪ねて来るのは、やはり地元客がメインなのだろう。素っ気ない外観で、エントランスにべたべたと貼り紙したり、公共施設ならではといった印象。館内はがらーんと静まり返っているが、コロナ禍にあって食堂を休止していることも理由の一つか。60帖の大広間と、個室休憩所が活用されていないとしたらもったいない。

芭蕉 月待ちの湯(山梨県都留市戸沢)券売機でチケットを購入し、フロントで下足箱とロッカーの鍵を引き換える。浴室は「芭蕉」と「月待ち」と名付けられ、男女週替わりとなっている。反転したつくりで、室内にはぬる湯・中温・高温の3つの湯船と、サウナと水風呂。露天に出ると、広々とした庭の中に岩風呂が1つぽつんとあるのみ。源泉は無色透明、かすかに硫化水素臭が感じられ、大月短大田中収教授いわく「ユニークな温泉」。このフレーズを見ると「山梨県に来たなぁ」と実感する。

芭蕉 月待ちの湯(山梨県都留市戸沢)サウナはこじんまりとした室内に、円筒型の小さな石積みストーブ。BGMを聞きながらのんびりと汗を流す。水風呂でじんわりと身体を冷やし、そのままぬる湯の温泉へ。人肌よりちょっと低い温度だから、いつまでも浸かっていられるし、うとうとしてしまう。都留市には銭湯(泰安温泉)、健康ランド(スターらんど)、人気のスパ銭(より道の湯)とバラエティに富んでいるけれど、温泉らしさを感じたいなら芭蕉月待ちの湯へ。アウトドア派やファミリーなら「和みの里」とセットでどうぞ。

芭蕉 月待ちの湯(山梨県都留市戸沢)

芭蕉 月待ちの湯(山梨県都留市戸沢)

芭蕉 月待ちの湯
源泉/都留市戸沢温泉(単純温泉)
住所/山梨県都留市戸沢874-1 [地図]
電話/0554-46-1126
交通/富士急行赤坂駅よりバス25分「芭蕉月待ちの湯」停下車
     国道139号線「赤坂」交差点より県道711号線経由で約4.8km
     ※無料駐車場あり
料金/大人720円、小学生410円、小学生未満無料
時間/10:00〜21:00、毎週月曜日定休(祝日の場合は翌日)

※露天風呂、ぬる湯の写真は公式サイトより転載