御幸湯(川崎市幸区小向仲野町)明治天皇が小向村の梅林を行幸したことに因んで名づけられた御幸公園、ないしは幸区。国道1号線(第二京浜)を挟んで西に東芝の工場、東に川崎競馬場の厩舎があり、新旧の住宅が立ち並ぶ一画には御幸湯がある。庶民的風情はその外観からも漂っているが、隣のヤマザキショップに掲げられた「スタンドコーナー COFFEE&JUICE」という看板も時代を感じさせる。玄関をくぐると番台があって、誰しもがイメージする銭湯の光景が広がっている。

御幸湯(川崎市幸区小向仲野町)脱衣所の2面にロッカーがあって、水槽には鯉が泳いでいる。中央には簡素なテーブルと椅子、そして体重計とエアロバイク。漕いでみたい衝動に駆られたが、一見客にとっては勇気がいる。濡れ縁は喫煙所を兼ねており、トイレにも通じている。

浴室にペンキ絵はないが、白タイルの明るい空間だ。洗い場のカランは仕切り壁側から7、島列で5-5、片側の島列で5つ並び、立ちシャワー2つと小さな水風呂、そして別料金(300円)のガス遠赤外線サウナ。道路端の電飾看板には「本格サウナ」とも。しかし利用客が誰もいないのではもったいない。

御幸湯(川崎市幸区小向仲野町)浴室の奥に湯船が3つ。座湯ジャグジー(超音波座風呂)、バイブラ湯、電気風呂を兼ねた薬風呂には「寿湯」のプレート。袋詰めされた薬草が浮かんでいる。銭湯らしく、いずれの湯もじんわりと熱い。

御幸湯を訪ねたのは平日の夕暮れ時。客はまばらでお年寄りばかり。みなご近所さんだろうけど、客どうし話をするわけでもなく、静かな時間が流れている。庶民的な外観のわりに、中は特筆すべきことなくいたって普通だったが、これこそ「普段使い」としての町の銭湯本来あるべき姿だな、と勝手に結論づけておく。

御幸湯(神奈川県浴場組合)
御幸湯(川崎浴場組合連合会)

御幸湯
住所/川崎市幸区小向仲野町1-29 [地図]
電話/044-511-5082
交通/JR川崎駅西口北よりバス「御幸公園前」停徒歩4分
     東急多摩川線矢口渡駅より徒歩23分
     JR南武線鹿島田駅より徒歩25分
料金/大人470円、中人200円、小人100円
     サウナは別途300円
時間/15:00〜23:00、不定休