浜の湯(東京都杉並区浜田山)鉄道の路線廃止や車両引退に集うマニアを「葬式鉄」と言うらしい。鉄道以上に廃業が相次ぐ町の銭湯にも、そのときばかり駆け付けるマニアがいるはずだ。

杉並区浜田山の浜の湯が今月いっぱいで廃業するとの情報は「銭湯ML」で知った。そのときちょうど井の頭線に乗っていたが(しかも浜田山を過ぎたばかり)、矢も盾もたまらず浜田山へ。商店街の通りに面したクラシカルな佇まい。ほかの店はビルを構えているというのに、浜の湯は千鳥破風にむくり破風の二段構え。左手はコインランドリーにしていたようだが、それも昔の話。そして掲示板には廃業のお知らせが貼られていた。

杉並浴場組合「せんとう.jp」によれば、区内には現在27軒の銭湯がある。しかしこのうち番台の銭湯といえば浜の湯1軒だけ。「寂しいねぇ」などと話し掛ける客に対して特別な愛想を振り撒くでもなく、淡々と仕事をこなしていた。番台の側面には気になる貼り紙があった。「男性のお客様、最近マナーが悪すぎます。お店側と良い関係を作って入浴しましょう」。脱衣所は格式高い折上格天井。大型扇風機が吊るされている。ロッカーはスーパー銭湯によくある100円リターン式だが、お金を入れないで使う人もいるし、丸いカゴも置いてある。

浴室は手前に洗い場、奥に湯船という配置で、カランは女湯との境壁側から7、5-5、5-5、6の列で並んでいる。すべて固定シャワー付き。洗面器はケロリンではなく、白地に青の温泉マーク。湯船は深湯、ジャグジー2基とミクロバイブラの浅湯。格子の奥からお湯が出てくるのだが、そこにあるのは「ガリウム石」ではなく高知県産の備長炭。お湯はぬるめ。背景画は丸山清人師が描いた富士山で、「伊豆」の題名とともに21.6.8の日付。

平日の夕方で客が10人を下回らないというのは、町の銭湯においては賑わっている部類ではないか。客の減少、経営者の高齢化(後継者不在)、建物や設備の老朽化など、廃業する理由はいろいろあるだろう。浜の湯とは縁もゆかりもないが、昭和31年からの長き歴史に終止符を打とうとは寂しい限りだ。

浜の湯(杉並浴場組合)
浜の湯(東京都浴場組合)

浜の湯
住所/東京都杉並区浜田山3-24-4 [地図
電話/03-3303-6665
交通/京王井の頭線浜田山駅より徒歩3分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/16:00〜23:30、毎週月曜日定休(祝日の場合は翌日)