梅の湯(川崎市川崎区渡田向町)印象深い銭湯との出会い、それもまた銭湯めぐりの楽しみだったりする。1軒1軒違うからおもしろい。たとえボロでも、客がいる限りはそれも銭湯の個性だ。川崎区渡田向町の住宅地にある梅の湯は、その外観からしてわくわくさせられた。屋根をも覆う鬱蒼とした樹木、ポリシーなく並んだ各政党のポスター。レトロ銭湯としての貫禄ある佇まいも、最近は手入れから遠ざかっているようだ。

暖簾をくぐると番台には誰もおらず、呼び掛けても応答はない。まれにあることだから料金はあとで払うこととし、先に風呂に入らせてもらうことにした。ほかに客はおらず、無人の脱衣所には付けっ放しのテレビと扇風機。貸し切りというわけだ。

梅の湯(川崎市川崎区渡田向町)梅の湯(川崎市川崎区渡田向町)梅の湯(川崎市川崎区渡田向町)

浴室の手前に洗い場、奥に湯船2つというオーソドックスな配置。カランは外壁側に7つ、6-6の島列(シャワーなし)、間仕切り壁に8つ。モザイクタイルで描かれているのは湖畔の富士山。

梅の湯(川崎市川崎区渡田向町)湯船は浅湯がイベント湯で、この日は「花香水」という黄緑色の入浴剤。深湯はジャグジーを2基設けているが、これが超熱湯を撹拌している状態で、肩までつかるには相当の我慢を必要とした。そして何といっても見ごたえあるのは背景画だ。どうしてこうなったと考えさせられるペンキの剥げようで、壁越しに見える女湯の富士山にいたっては、まるで噴火しているかのようだ。4.11.23と日付があったから、ちょうど20年前。この先もこのままであってほしい。

梅の湯(川崎市川崎区渡田向町)お湯につかりながら番台をちらちらと伺ってみるも、30分経っても戻ってこない。お金を置いて帰ればよいかと判断して、脱衣所に戻り、パンツを履いて、ジーパンを履いて、Tシャツを着ようかとした頃にようやく戻ってきた。73歳のおじいさんだが、見た目はだいぶ若い。東京で銭湯を営むおじさんを頼って上京し、向河原で修行したのちに独立。以来46年が経つという。釜場も番台も1人でこなしているというから、それが若さの秘訣だろうか。おじいさんの人柄もまた忘れられない魅力だ。

梅の湯(神奈川県浴場組合)
梅の湯(川崎銭湯どっと混む)

梅の湯
住所/川崎市川崎区渡田向町17-6 [地図
電話/044-233-2072
交通/JR・京急川崎駅よりバス「成就院前」停徒歩4分
     またはJR南武支線川崎新町駅より徒歩11分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/14:30〜23:00、不定休