鶴見市場駅の名はかつて開かれた海産物市場に由来する。駅の南側には第一京浜(国道15号線)が走り、屋上に自由の女神が立つホテルニューヨークを過ぎればゴム通りに出る。この道をまっすぐ行くと、いまは大型分譲マンションに変わってしまったが、ここはかつてのワイルドブルーヨコハマ。戦前は横浜ゴムの工場があった。その南にある京三製作所は鉄道や道路の信号メーカーとして有名だが、戦前は自動車の生産も行っていた。ゴム通りの東側、鶴見区平安町と川崎区京町は大正時代に京浜急行が分譲した町で、2つの町を隔てていた運河跡はいまでも地図上で確認できる。町に歴史ありとはまさにこのこと。普通電車しか停まらない小さな駅だが、降りてみるとなかなか面白い。

平安湯(横浜市鶴見区平安町)ゴム通り三差路そばのローソンを過ぎて東に行けば、しばらくして平安湯がある。正面の外壁はきれいに改装しているが、屋根を見れば昔ながらの銭湯の味わい。コインランドリーを併設し、通り側に4つ並んだ出窓のところがロビーで、フロント両側に男女浴室の暖簾が下がっている。脱衣所は折上格天井で堂々たるもの。

平安湯(横浜市鶴見区平安町)平安湯の魅力は温泉を使用していること。横浜温泉は一般的に黒褐色だが、ここは茶と緑を足した色で、湯の花によるわずかな濁りがある。浴室に入ってすぐ右手には小さな水風呂があって、床のタイルは茶色に変色している。鉄分を多く含むようで、かすかな鉄サビ臭とさらさらとした肌ざわり。神奈川県内においては個性が際立った泉質だと言える。しかもかけ流し。水風呂で客が呼べる銭湯だ。

浴室の奥には加温した温泉浴槽もあるが、そちらは色も薄く、水風呂に比べれば個性は劣る。ほかに白湯で押しボタン作動式の電気風呂、バイブラ湯、座湯ジャグジーの湯船がある。背景のタイルは魚が泳いでいる様子を描いたもの。洗い場は水風呂の壁側に4つ、5-5の島が2列、境壁側に6つのカランが並んでいる。そして脱衣所に食い込む格好で高温乾式のサウナがあって、これは無料で利用できる。

水風呂に入りたいがために加温浴槽、サウナを何往復。水風呂は大人2人で目一杯の大きさなので気を遣ってしまうが、ほかに客がいなければ独り占めしていたい気持ちよさ。はるばる訪れる価値のある温泉銭湯だ。

平安湯(神奈川県浴場組合)
平安湯(横浜市浴場組合)

平安湯
源泉/横浜温泉(ナトリウム−塩化物・炭酸水素冷鉱泉)
住所/横浜市鶴見区平安町1-70 [地図
電話/045-502-4126
交通/京浜急行鶴見市場駅より徒歩8分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/15:00〜24:00、不定休