日の出浴場(横須賀市安浦町)京急の県立大学駅はその字のごとく、神奈川県立保健福祉大学が駅名の由来。栄養短大と衛生短大を母体として大学が誕生する以前は「京急安浦」という駅名だった。

安浦の地名はこの地を埋め立てた安田保善社(現在の安田不動産)が由来で、かつては漁師町とカフェー街で賑わったという。民家の塀にあった「わかめ売ります」という貼り紙やどことなく不自然な路地の風景、独特な意匠の建物もちらほら見受けられたが、平成になって完成した広大な埋立地、その名も「平成町」にはマンションが建ち並んでおり、町の歴史を一変させてしまっている。

日の出浴場(横須賀市安浦町)県立大学の駅前徒歩圏にはビル銭湯の松の湯、昔ながらの佇まいの日の出浴場、駅裏の富士見町には新世館の3軒の銭湯がある。今回紹介するのは日の出浴場。玄関先の宝船のタイル絵と暖簾が看板代わり。

男湯・女湯と入口は分かれているが、扉を開けるとすぐ目の前にフロントがある。たたきに靴を脱ぎっぱなしにしている人もいるが、脱衣所側に少ないながらも下足箱はある。銭湯としては小ぶりで、フロントと脱衣所はパーテーションで斜めに仕切っただけ。壁側にロッカーもあるが、鍵はフロントにて貸し出し。ほかの客はカゴを使っていた。

日の出浴場(横須賀市安浦町)浴室は壁側に5つずつと島列で4-4のカランが並び、奥に深湯と浅湯(バイブラ湯)の湯船。温度計は47℃を指していたが、そこまでの熱さではなかった。

ペンキ絵はないが、高さ90cmくらい×湯船の幅いっぱいの大きさのタイル絵がある。鯉が波を泳いだり滝を登ったりと縁起がいい。境壁にもタイル絵が3つ並んでおり、湖畔の富士山、風林火山、ライオンの図柄。いずれも九谷焼の立派なもので、脱衣所との扉わきにもう2つ。大小計7枚のタイル絵はマニアならずとも必見だ。

日の出浴場は開業して50〜60年になるそうだが、ライオンは少年雑誌に載っていたものを特注したらしい。「当時の少年サンデーとかに載っていたんじゃないですかねぇ」と女将さん。味わいのある町の銭湯だ。

日の出浴場(神奈川県浴場組合)

日の出浴場
住所/横須賀市安浦町3-9 [地図
電話/046-823-2732
交通/京浜急行県立大学駅より徒歩5分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/15:00〜23:00、不定休