雉子亭豊栄荘(箱根町湯本茶屋)箱根の温泉公式ガイド「箱ぴた」によると、箱根全体の宿の数は103軒。組合に加盟していない宿もあるだろうから正確な数はわからないが、そのうちの何割が日帰り入浴を実施しているのだろうか。インターネットや雑誌などで大きく宣伝しているところ、はたまた現地にひっそりと看板を掲げているところなどさまざまだが、雉子亭豊栄荘を知ったのは雑誌「温泉博士」だった。

国道1号線三枚橋交差点より畑宿へ至る県道732号線(旧東海道)の途中に、「そういえばあったなぁ」という程度の記憶。ホームページは洗練されているが、それとは対照的に現地は素朴な外観。一見すると小さな宿だが、山の斜面に建っているため地上階のフロントは4階にあたり、しかも渡り廊下を移動するため館内は意外と広い。そして、日帰り入浴だというのに浴室の手前までわざわざお姉さんが案内してくれた。

雉子亭豊栄荘(箱根町湯本茶屋)大浴場は地下2階にある。湯船は幅10mほどだろうか。一部にはジャグジーを設けている。窓の外には鮮やかな緑の景色が広がり、ワイドスクリーンの眺めは飽きることがない。左手前方には離れの「雉子亭」が見えるが、これは400年前の合掌造りを移築したもの。木々に囲まれて建つ堂々とした佇まいが素晴らしい。旅館の敷地はだいぶ広いようだが、庭と山とに境目はなく、自然の趣と開放感をじゅうぶんに堪能できる。

雉子亭豊栄荘(箱根町湯本茶屋)雉子亭のわきに源泉井戸(湯本77号)のやぐらが立っている。ここから湧出するのはpH9.07と箱根随一のアルカリ度を誇るという。つるすべ感のあるお湯は循環かけ流し。

なお、大浴場の脱衣所ではカゴを使用するが、数は少ないものの貴重品ロッカーも完備。露天風呂は簡単な棚しかないため、心配な人は大浴場に預けて移動するとよいだろう。なお、休憩は大浴場に隣接したロビーにて。麦茶のサービスがある。(写真はロビーの休憩室からの眺め)

雉子亭豊栄荘(箱根町湯本茶屋)露天風呂は離れた場所にあるため、服を着て移動する。屋外の渡り廊下から雉子亭を経て、庭を眺めながら歩くと小屋が見えてくる。ここが脱衣所。箱根で川べりの露天風呂とは珍しい。須雲川の渓流と対岸の山の緑。台風で木々がなぎ倒されたようだが、それを含めて自然のままの景色がよい。岩風呂は浅めにつくっており、お湯はちょっと温めなので、時間を忘れて長湯してしまう。夜になると蛍が飛ぶのだという。

雉子亭豊栄荘(箱根町湯本茶屋)雉子亭豊栄荘(箱根町湯本茶屋)

箱根の相場と比べて入浴料金は高めに設定しているが、その価値と差別化は図れているかと思う。料金を下げればもっと集客できるだろうが大衆化の懸念もあるし、宿泊料金との兼ね合いもあるだろう。今回は「温泉博士」の利用により、差額の625円でこのお湯と景色の素晴らしさを堪能できたのは幸運だった。箱根の穴場を見つけた気分だ。

雉子亭豊栄荘
源泉/湯本温泉(単純温泉)
住所/足柄下郡箱根町湯本茶屋227 [地図
電話/0460-85-8763
交通/箱根登山鉄道箱根湯本駅よりバス8分「葛原」停すぐ
     国道1号線三枚橋交差点より県道732号線で約2.5km
料金/1,625円 ※バスタオル・フェイスタオル付
時間/15:00〜20:00

箱根の温泉公式ガイド「箱ぴた」(箱根温泉旅館協同組合)