横須賀市佐野町の松の湯は、三崎街道の一本裏手の通りにあって、しかも路地の奥に位置する。衣笠駅からだと衣笠十字路より三崎街道、曹源寺入口交差点を斜め右方向へ。しばらくして右手に暖簾が見えるが、この暖簾のかけ方はどう見ても不自然だ。そして幅1mちょっとの路地を入っていくと「ゆ」の文字のタペストリーと福助のタイル絵がお出迎え。営業時間の案内板には上から紙を貼っているが、13:30〜19:30とは普通の銭湯に比べて2時間くらい早い。「休みは月に2〜3日」とアバウトな感じもいい。

松の湯(横須賀市佐野町)松の湯(横須賀市佐野町)松の湯(横須賀市佐野町)

ご主人は番台には座らず、男湯側の脱衣所で客と談笑中。浴室に誰もいなかったので、ペンキ絵を写真に撮らせてほしいとお願いすると、「せっかくだから女湯のほうも撮っていきなよー」と。30年くらい描き替えていないそうで、「汚ったねぇから雑誌とか載せちゃだめだよ(笑)」と常連さん。ちなみに鎌倉にあった新世美術の作品。多少の黒ずみもあるが、板に直接描いているせいか状態はいい。

松の湯(横須賀市佐野町)松の湯(横須賀市佐野町)
左は女湯。ご主人いわく「何の景色だかわかんないなぁ」。右は男湯

銭湯経営はおじいさんの代からで、東京を空襲で焼け出され、いったんは横浜へ。そしてここ佐野町のボロボロの銭湯を買い取って建て替えしたという。それから50年ほど経ち、ご主人が継いだのは2年半ほど前。サラリーマン時代に比べて「収入は5分の1に減ったけど、食べる分くらいは何とかなるし、好きな本を読んでテレビを観て、ストレスも5分の1だよ」と。釜を2〜3年前に入れ替えたそうで、「だいたい10年持つとして…あと7年くらいかな(笑)」。ざっくばらんな感じがいい。

ペンキ絵の写真でだいたいわかると思うが、浴室はこじんまりとしたもの。カランは女湯との仕切り側から5つ(シャワー付き)、島列は5-5、壁側は2つ+立ちシャワー1つ(波板の囲い)。女湯との仕切りは上部が型板ガラスだが、女湯は誰もいないし(電気を消しちゃっていた)、よほど近づかなければシルエットも映らないし。天井はアーチ型で、真ん中に湯気抜きを設けているが、採光も兼ねているのか波板が屋根代わり。湯船は浅湯と深湯の2つで、予想に反してぬるめだった。路地裏の人情銭湯=熱湯とは勝手な思い込みだが、もうおしまいだから釜の火を消してしまったか。

ところで、気になるのは営業時間。ご主人が経営を継いだときは、よそとだいたい同じだったという。しかし、開店前には外で待っている客がいて、「10分早く」を繰り返していた結果がこの時間なのだとか。それでも正確に言えば10分ほど早く開けているそうだが、「しまいには朝湯になっちまうよ(笑)」。そして、客は近所の常連ばかりなので、ひと通りの顔なじみが来たらそれでおしまい。「19時頃になったらもう閉めて帰りたいよ。○○さんは昨日来たから今日は来ないべ」と。また来たいと思わせるご主人のお人柄。ぜひ皆さんにおすすめしたい。

松の湯(神奈川県浴場組合)

松の湯
住所/横須賀市佐野町5-5 [地図
電話/046-851-1822
交通/JR横須賀線衣笠駅より徒歩14分
     三崎街道(県道26号線)「曹源寺入口」交差点を斜め右方向へ
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/13:30〜19:30、月2〜3回定休(隔週金曜日?)