秋山温泉(山梨県上野原市秋山)つげ義春は山梨県秋山村を訪ね、「秋山村逃亡行」という短編紀行文を記した。旅の目的は、山奥でひっそり隠棲すること。平成になっても見渡す景色に変化はさほどないのかもしれないが、秋山の地はいまや温泉好き、サウナ好きに知られるところ。ふるさと創生資金によって平成8年にオープンした秋山温泉は、旧村営から民間委託となり、その知名度は全国区だ。

秋山温泉(山梨県上野原市秋山)秋山温泉までのメインアプローチとなる秋山大橋は、神奈川県相模原市(旧藤野町)との県境からすぐそこの距離。越えた山々のすべてが神奈川県だったとは、何とも複雑な心境だ。集落からは離れて建つ秋山温泉も、山の緑にぐるりと囲まれたロケーション。玄関先では鹿やイノシシの剥製がお出迎え。さらには熱波甲子園、おふろ甲子園での栄光が誇らしげに飾られている。

入館に際してフロントでは料金の支払いとともに、下足箱とロッカーの鍵を引き換える。入館料でお風呂と屋内外プールが利用でき、水着持参でなければレンタルも(500円)。プールでは様々なプログラムも実施されているらしく、地域住民の健康増進にも一役買っているようだ。

秋山温泉(山梨県上野原市秋山)

遠方より訪ねる客の目当ては温泉だろう。まもなく20周年を迎える施設ゆえ、浴室は洒落っ気と無縁だが、露天風呂に面した窓を大きく設け、明るくさわやか。大中小と3つある湯船はいずれも温泉を使用しているが、大きな湯船にひとたび浸かれば、なかなか出られない。泉温36.4℃で、これを加温も加水もせずにかけ流し。人肌の心地よさを感じながらうとうとし、気づけば30分はあっという間。

秋山温泉(山梨県上野原市秋山)

加温した湯船(中)やバイブラ湯(小)もあるからお好みで。開放感にひたるなら露天岩風呂へ。ちなみに源泉はpH9.8の高アルカリ性で、湧出量は毎分200リットル。肌のなじみも良く、館内には飲泉所もあって、体内も健やかになれそう。新湯治場の謳い文句も納得だ。

秋山温泉(山梨県上野原市秋山)浴室内にはスチームサウナもあるが、水着に着替え、屋外プールの一角にある「採暖室」という名のサウナ小屋へ。プールで泳いだりするのは興味がないので、横目に見つつも一気に通過。アウフグース(ロウリュ)の開催は1日4回。しかしこの日は「熱波甲子園ありがとう熱波」と称し、平日にもかかわらず1日6回のスケジュール。

アウフグースの時間だけは暖をとるだけにあらず。客どうし、客とスタッフとの交流の場でもあった。先ほどまでフロントに立っていたおねえさんがタオルのパフォーマンス。

秋山温泉(山梨県上野原市秋山)換気しすぎでは!?ってくらい開始直前まで窓を開け放つから、ストーブは轟音とともに一気に加熱。アロマ水の量が少なくても香りが広がるのは、スタッフがサウナの仕組みとロウリュの立ち方を熟知しているからだろう。熱波は香り、風、熱とテーマを持ち、段階ごとに強く扇ぐ。

アウフグースは1時間おきに3回受けたが、スタッフ3人とも技術にブレがなく、それでいて個性も感じられる。盛り上げつつ、客と一緒に場を作り上げていく空気感。支配人のご指導の素晴らしさもありながら、やはり個々のたゆまぬ努力か。さすが熱波甲子園王者の貫禄。

秋山温泉(山梨県上野原市秋山)休日ともなれば食事処も混雑するのだろうか。山梨県らしさと言えば、座卓がずらりと並ぶ光景。ラストオーダーが早く、都会の感覚だと夕飯にありつけないのは必至。1階と2階にそれぞれ休憩室もあり、日がな一日のんびり過ごすもよし。都心から約1時間の距離で、豊かな自然と良質な温泉、もはや芸術の域ともいえるアウフグースも満喫し、心身ともにととのいを得られるはずだ。



秋山温泉
源泉/秋山温泉(雛鶴の湯:単純温泉)
住所/山梨県上野原市秋山2210 [地図
電話/0554-56-2611
交通/中央道上野原ICより県道35号線経由で約15分
料金/大人750円、子供550円、幼児無料
     ナイト料金(17時以降):大人400円、子供200円、幼児無料
     ※大人は高校生以上、子供は中学生以下、幼児は小学生未満
時間/10:00〜21:00、毎週月曜日定休(祝日の場合は営業)

※5年前の記事をもとに全面的に書き直しました。