青木村は東は上田市、西は松本市に接する人口5,000人弱の小さな村。「青木三山」と呼ばれる夫神岳、子檀嶺岳、十観山がそびえ、村の面積の8割を山林が占める。古くから「夕立と騒動は青木から」という言葉があり、江戸時代から明治にかけて5回の農民一揆が起こった。一地域としては最多であるらしい。そんな青木村は峠道を経て別所や鹿教湯に通じているが、村内にも田沢、沓掛という温泉が湧いている。

田沢温泉街田沢温泉には温泉宿4軒と共同浴場1軒しかないが、歴史と風情を感じさせる温泉街。シンボルともいえる「ますや旅館」は、木造3階建の本館や土蔵などが国の登録有形文化財に指定されている。また、映画「卓球温泉」の撮影が行われたのも同旅館だ。開湯は飛鳥時代後半と言われ、山姥が湯治に訪れ、鬼退治をした坂田金時を産んだという伝説がある。「子宝の湯」としても有名で、母乳の出がよくなると言われている。共同浴場(外湯)が「有乳湯(うちゆ)」と名付けられたのは、こうした理由だろうか。

有乳湯(長野県青木村田沢)有乳湯は平成12年に建て替えられた純和風の建築。坂道の途中に建っているため、玄関と浴室は2階に、休憩室は1階にある。また、屋外には無料の足湯もある。券売機でチケットを購入し、受付に提出。脱衣所には棚と洗面台のみ。浴室にある5つのカランは、両隣に仕切りがついており、しかも温度調節可のホースシャワータイプ。カランでも源泉を使用している。湯船は1つだけだが、共同浴場にしてはゆったりサイズ。7〜8人は入浴可能だろう。お湯はかけ流しで、無色透明、かすかに硫黄臭。特筆すべきはこの泉質で、お湯につかってしばらくすると身体は細かい気泡で覆われる。スーパー銭湯でいま流行りの「炭酸泉」と同じ効果だ。40.2℃の源泉は加温していないため、長湯好きにはたまらないぬるさ。しかし身体の芯から温まる。ここは知られざる名湯だと思う。

有乳湯
源泉/田沢温泉(単純硫黄泉)
住所/長野県小県郡青木村田沢2700 [地図
電話/0268-49-0052
交通/上田市内から国道143号線(上田駅から約20分)
    ※無料駐車場30台分あり
料金/大人200円、小人100円(4歳〜小学生)
時間/6:00〜21:30、年中無休

青木村観光協会