不動湯(山梨県富士吉田市大明見)温泉にはさまざまな効能があるが、具体的な症状の改善を目的とした客が訪れる温泉地(温泉施設)もある。富士吉田市の郊外、杓子山の西麓に位置する一軒宿の「不動湯」は、皮膚病やアトピーに効く温泉として有名だという。そしてこの地域最古の温泉として知られているのだとか。予備知識をまったく持たずに訪れたのだが、このブログを通じて誰かのお役に立てれば何より。もちろん療養目的でない客も多く、地元の共同浴場のような一面もある。公共の宿でもあるため、格安で宿泊することもできる。

不動湯(山梨県富士吉田市大明見)国道138号線の富士見公園前交差点(道の駅富士吉田の1つ忍野寄り)より鐘山通りを北へ。富士山温泉鐘山苑を通過し、しばらくして背戸山トンネルが見えたら、その手前を東へ。ここから先にはところどころに小さな看板が出ているが、小川の土手を経て山に入っていく(すれ違い不可の狭い道)。やがて赤い鳥居と一軒の建物が見えたら、そこが不動湯。富士山を望むロケーションで、4月末は桜の見頃だった。

不動湯(山梨県富士吉田市大明見)不動湯の歴史は古く、ホームページによると「源頼朝公が富士の巻き狩の際、不動尊の境内より湧き出る岩清水に矢立の筆をひたして妻の政子の方に便りを書いて送り、それからこの不動尊が、硯水不動尊と呼ばれる様になったと伝えられております」とのこと。不動湯の霊水は浴用としてはもちろん、飲用としても効能があり、ポリタンクで汲みにくる客も多い。「不動湯の霊水は腐らない」のだとか。湯治場として開湯したのは約100年前で、現在は公共の宿として営業している。

不動湯(山梨県富士吉田市大明見)入館したら券売機でチケットを購入する。宿泊費も券売機で精算するらしく、素泊まりは大人4,000円。客室は1階と2階にあって、全17室。ロビーからすぐのところに浴室があったが、狭くてびっくり。6帖ほどの空間に湯船が2つ、カランが2つ。「湯風呂」(39〜42℃に設定)は2帖ほどの大きさ、「水風呂」(30〜32℃に設定)は1.5帖ほどの大きさ。親子づれとおじいさんが入っていたので、これで定員いっぱいな感じ。ちびっ子は「もう出たい」と言い、お父さんは「もうちょっと入ればボツボツがよくなるから…」と。やがて親子が出て行くと、おじいさんが「あんたは初めてかい?どこかが悪いのかね?」。館内にはもうひとつ大きな浴室があって、療養目的でない人はそっちに行くのだという。「べつに気にしないならいいんだけど…」。おじいさんはたまに不動湯を訪れては、朝から夕方まで滞在するのだとか。湯風呂と水風呂は数分ずつ交互に入るのが効果的らしいが、おじいさんは少なくとも30分以上は水風呂につかっていた。

大広間をはさんで、もうひとつの浴室があった。先ほどの浴室と比べて倍くらいの広さがある。こちらが元からあった浴室で、湯風呂と水風呂という組み合わせ、温度設定は変わらない。循環かけ流しだが、あふれる量が少ないせいか、お湯が若干汚かったような気がする。聞こえてくる会話によると、地元客が多いようだ。窓の外からは雑木林の山、下には水汲み場への歩道が見える。そういえば手前の浴室(新風呂あるいは療養風呂)は二面に窓があって、片方はバルコニーに面している。そこは喫煙所を兼ねた休憩スペースだが、田舎らしくおおらかなつくりだと言える。

療養目的の方は藁をもすがる思いかもしれないが、そうでない方ものどかな山あいの温泉風情を味わってみてほしい。湯風呂と水風呂を交互に入浴するという体験も珍しいし、じっくり湯と向き合うこともたまには良いものだ。

旅館不動湯
源泉/不動湯(単純温泉)
住所/山梨県富士吉田市大明見4401 [地図
電話/0555-23-9239
交通/国道138号線「富士見公園前」交差点より約7.5km
     富士急行富士吉田駅より車で約15分
料金/大人800円、子供600円
時間/8:00〜21:00