亀の湯(横須賀市汐入町)かつてこのブログで横須賀市汐入町の「大黒湯」をご紹介したが、町内にはもう1軒銭湯がある。子之神社に行く手前の路地を入っていったところ、古い住宅地の一画にある「亀の湯」だ。この2軒は400m足らずの距離にあり、どちらも庶民的な風情を残している。失礼ながら言ってしまえば鄙びている。そして2軒に共通する点といえば、めちゃくちゃ熱湯なのだ。どちらも常連によって支えられている銭湯だが、汐入町の住民は相当な熱湯好きに違いない。

亀の湯(横須賀市汐入町)車1台通るのがやっと、という細い通りに面して建ち、暖簾は路地に向けて出している。はっきり言って目立たない。周囲は住宅が過密して建ち並び、南側は山の斜面が迫っている。近所には「子育て地蔵尊」があり、長光寺本堂までの階段には無数の幟がはためいている。表通りの商店街からして夜は人通りが少ないが、路地に入ってしまうと辺りはしーんと静まり返っている。

亀の湯は、55年前に先代が経営を引き継いだという。番台のおばちゃんは古い話はわからないとしながらも、建物は「震災の年に棟上げした」という話を聞いたことがあるとか。となれば、もうすぐ90年になるのだが。脱衣所にロッカーはわずかにあるのだが、それより場所を取っているのが、常連さんの洗面用具置き場。ここでは丸籠を使うのが流儀だ。年代物の体重計、数本の牛乳しか入っていないショーケースなど、時間が止まっているような錯覚を受ける。

亀の湯(横須賀市汐入町)浴室は小ぶりで、タイルなどはところどころ黒ずんだり剥がれたりしている。カランは間仕切り側から6、3-3、3の列。真ん中の島にはシャワーも鏡もない。

湯船は2帖ほどの浅湯と、2帖半ほどの深湯。どちらも衝撃的な熱さだ。ピリピリと突き刺すような「痛み」には数秒しか耐えられない。確認せずに足を突っ込もうものなら、絶叫とともに飛び跳ねるに違いない。常連は「水を埋めずにそのまま入る」というが、番台のおばちゃんは「どんどん埋めちゃってください」と。蛇口を全開にし、手桶でばしゃばしゃかき混ぜ、意を決してお湯につかる。手足を動かすとお湯に流れができるので、じっと耐えるのがコツだが、ここではそんなセオリーは通用しない。なぜならジャグジーによって、熱湯が常に押し寄せてくるから。

先日は温度計を持って再訪し、浅湯で47.5℃という記録を得たが(汐入の大黒湯と同じ)、体感温度では亀の湯に軍配が上がる。深湯はさらに熱くて、驚愕の48℃!湯船につかることを何度かチャレンジしているのだが、そのたびに片足を突っ込んでは独り悶絶している次第。銭湯の醍醐味といえば、お湯の「熱さ」を挙げる人もいるだろう。「うちは何にもない銭湯だから…」とおばちゃんは謙遜するが、亀の湯には間違いなく神奈川県ナンバーワンというべき「熱さ」がある。こんな銭湯が汐入の路地にひっそり隠れていたなんて!熱湯好きはぜひチャレンジを!

亀の湯(神奈川県浴場組合)

亀の湯
住所/横須賀市汐入町5-2 [地図
電話/046-822-4425
交通/京急汐入駅より徒歩4分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/16:00〜22:00、毎週金曜日定休