日の出湯(沖縄県那覇市泉崎)沖縄県では最盛期の60年代には離島を含めて300軒以上の銭湯があったというが、現在残っているのは沖縄市の「中乃湯」と、那覇市の「旭湯」「日の出湯」の3軒のみ。このうち旭湯は、県道拡幅のため今年5月に閉店するのだという。全国的に町の銭湯は減少の一途をたどっているが、沖縄県はさらに厳しい状況にある。うちなーの「ゆーふるやー(銭湯)」を知ることは、沖縄の庶民の生活を知ることでもある。皆さんの沖縄観光にも「銭湯」を加えてみませんか?ということで、那覇市泉崎の「日の出湯」へ。

日の出湯(沖縄県那覇市泉崎)那覇随一の繁華街「国際通り」から南へ10分程度の場所にあり、観光客にとっても利便性は高い。住宅街の一画にあって、3階建の1階部分で銭湯を営んでいる。建物のつくりこそ沖縄っぽいし、暖簾も出していないが、見た感じは本土の銭湯と何ら変わりはない。引き戸を開けるとその正面に番台風のフロントがあって、孫娘だろうか、若い女性が出迎えてくれた。番台というと普通は半畳ほどの狭い空間だが、日の出湯は1帖程度あり、女性は膝を伸ばしてテレビを観ていた。まさに自宅で寛ぐような格好で。

男湯と女湯は左右に分かれ、暖簾をくぐると脱衣所、そして仕切りもなく浴室へと続いている。境目にはわずかに段差があるだけ。温泉場の共同浴場ではこうしたつくりもよくあるが、銭湯では珍しい。気候が温暖だから、あえて仕切る必要がないようだ。壁の一面に四角いロッカーを設けているが、鍵が壊れているどころか、扉が外れている箇所も。玄関先に下足箱がないなぁと思って、たたきに脱ぎっぱなしにしてしまったが、実は脱衣所内に設けている。洗面用具を置く棚も兼ねているようだ。

浴室の真ん中に小さな湯船があって、カランは奥の壁に3つと側壁に5つ。奥のほうを使ったが、蛇口の位置は床から1mほどの高さにあって使いづらいことこの上ない。蛇口の印でお湯と水を判別するのが普通だが、ここではタイルに直接「湯」「水」と書いてある。蛇口から出てくるお湯の量は少なく、そしてぬるい。いっそのこと湯船から汲み出して洗い流そうかと思ったが、誰もそうしていないのでやめておいた。側壁はもっと高い位置に蛇口を設けていて、蛇口のすぐ下には丸型のボウルがある。そこには栓がなく、お湯と水の蛇口を両方ひねって混ぜ合わせたら、床に置いた桶に流れ落ちるという仕組み。立ったり屈んだりしなければならないが、このつくりは日の出湯に限ったことではなく、いわば沖縄スタイルということらしい。

湯船は2帖ほどの大きさで、隅を切った八角形。黄緑色の入浴剤が入っている。お湯はかなりぬるめで、ひょっとしたら40℃を下回っているのでは?と思う。温暖な沖縄だからこそ、かもしれない。日頃の熱いお湯に慣れちゃっていると物足りないし、長湯でごまかそうとも思うけど、小さな湯船は4人が精一杯。平日の昼間だが5〜6人の客が訪れていたので、他人の動向に気を遣いつつ…。湯船に注ぐためのパイプ管が2本設えてあるが、1本は水、もう1本はお湯。さすがにぬりと思ったのか、おじさんが勝手に蛇口をひねって足し湯。「水で埋める」というのは関東でよくある光景だが、まったく逆の光景だ。パイプが錆びていたり、タイルが茶色く変色したりとくたびれているが、このローカルな風情が味わえるのも町の銭湯ならでは。

風呂から上がると、今度は「おばぁ」が番台に座っていた。日の出湯は50年以上続いているという。「地元の人は少ないねぇ。みんなシャワーさー」。観光客も時おり訪れるそうだが、それは銭湯マニアに限ったことではなく、やはり立地の良さが客を惹き付ける理由だろう。ホテルのユニットバスで作業的にシャワーを浴びるよりも、銭湯でのんびり過ごすほうが疲れも癒されるはず。旅の思い出にもなるだろう。

日の出湯
住所/沖縄県那覇市泉崎2-11-2 [地図
電話/098-832-0204
交通/ゆいレール県庁前駅より徒歩10分
料金/大人350円、中学生250円、幼児100円
時間/15:00〜21:00、毎週日曜日・木曜日定休



沖縄県内のそのほかの銭湯(2011/2/22現在)

旭湯
住所/沖縄県那覇市樋川1-27-9 [地図
時間/15:00〜21:30、毎週水・木・日定休
 ※道路拡張のため今年5月に閉店予定(正式な時期未定)
  ⇒2011/5/31に廃業しました。

中乃湯
住所/沖縄県沖縄市安慶田1 [地図
時間/15:00〜21:30、毎週日曜日定休

(追記-2014/6/30)
日の出湯は2014/5/14をもって廃業しました。
『那覇最後の銭湯「日の出湯」 60年の歴史に幕』(琉球新報)