稲荷湯(東京都千代田区内神田)日本経済の中枢を担うオフィス街といえば千代田区大手町。そして、日本橋川と首都高を境にして北側で隣接するのが内神田である。江戸開城以来の面影を残す町割りにオフィスビルや商店が建ち並ぶ。内神田の南端に鎮座する御宿稲荷神社の由緒は開城よりも古く、天正18年(1590)まで遡る。今回ご紹介する「稲荷湯」の屋号は、御宿稲荷神社に由来するのであろう。神社のすぐ北側に位置するビル銭湯だ。

訪れたのは平日の日もどっぷり暮れた頃。都心でいま流行っている「銭湯ランナー」の拠点であるらしく、仕事を終えてこれから走る人、走り終えてひとっ風呂する人でごった返していた。目の前にある公園ではランナーがストレッチをしたり、仲間どうしで集まったり、この一画だけが異空間といった印象。玄関先にはランニングシューズ専用の棚もある。フロントで料金を支払って脱衣所へ向かうが、狭い室内は汗臭い。

浴室の規模も小さく、手前に洗い場、奥に湯船という配置だが、カランは壁側に6、島式で4-3、壁側に3という配置。すべてに固定式シャワーが付き、ほかに立ちシャワーも1つ。湯船はL字型で、出っ張った部分が円形にカーブしている。座湯のボディマッサージとジャグジー、細かい気泡のバイブラ湯が区切りなく1つの湯船に収まっている。幾何学模様のタイルで家の模様が描かれているのみで、銭湯らしい情緒は感じられない。

ジャグジーで下半身をほぐす人が目に付くが、たいていはお湯にさっとつかる程度。銭湯ランナーは意外と回転が速い。というより銭湯ランナー以外の客はほかにいなかった。オフィス街のため客のほとんどが銭湯ランナーなのでは?とすら思う。しかし考えてみると、ジョギングやウォーキングの趣味+銭湯という組み合わせは、都心のオフィス街だけに限ったことではなく、どの銭湯でも打ち出せる集客手法ではないだろうか。銭湯が「おすすめのコース」を設定したっていい。健康増進や新たなコミュニティづくりに銭湯が果たすべき役割と可能性は大きい。

稲荷湯(東京都浴場組合)

稲荷湯
住所/東京都千代田区内神田1-7-3 [地図
電話/03-3294-0670
交通/東京メトロ・都営地下鉄大手町駅より徒歩4分
     JR山手線・京浜東北線・中央線神田駅より徒歩7分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/14:50〜24:30(祝日は14:50〜22:30)
     毎週日曜日定休