源ヶ橋温泉(大阪市生野区林寺)大阪市内にもたくさんの銭湯が残っているし、電車が高架線を走っていると車窓から煙突を見かけることも多い。大阪府浴場組合や各地域組合のホームページも公開されており、銭湯を訪問しやすい地域だといえるだろう。個性派銭湯も数多く存在するようだが、夏の甲子園観戦のついでに向かったのは、生野区にある「源ヶ橋温泉」という銭湯。インターネット検索の上位に表示され、個性派+昭和レトロの代名詞であるらしい。しかも国の登録有形文化財に指定されているのだ。

源ヶ橋温泉(大阪市生野区林寺)ターミナル駅の天王寺から大阪環状線でひと駅、寺田町が最寄駅。東西に貫く幹線道路を東に進み、源ヶ橋交差点から商店街を歩く。個人商店ばかりが軒をつらね、典型的な下町風情がつづいている。そんな商店街が終わりに近づいた頃、右手側の路地奥にあるのが源ヶ橋温泉だ。夏なので大木の枝葉に半分隠れていたが、目を惹くのは洋風の外観。洋瓦なのにしゃちほこを載せ、玄関の上には左右一対の「自由の女神像」。入浴=ニューヨークということなのだろう。高々と掲げているのはトーチならぬ温泉マーク。大阪らしい遊び心を感じさせる。

源ヶ橋温泉(大阪市生野区林寺)玄関をくぐれば、やはり日本の銭湯。番台式の庶民的な雰囲気だ。脱衣所は広くゆったりとしており、壁側にロッカーもあるが、脱衣籠を使う客も多い。椅子があるにもかかわらず、床に直接座って服を脱いだり、湯上がりに寛いだりする人も。関東ではまず見られない光景だ。銭湯では脱衣所のことを「板の間」というが、ここでは文字通り板の間としての役割を果たしている。

浴室も広めで、カランは壁に沿ってL字型に並び、全部で16。日曜日の夕方だからか客が多く、ほとんどが埋まっていた。湯船は室内中央に配置されているが、そのまわりは床面より一段高くなっている。そこに腰掛け、直接お湯を汲んで身体を洗う人もいる。関東よりひと回り小ぶりの桶でバシャバシャとやるのだ。噂には聞いていたが、現実の光景として繰り広げられていた。それ以外にも、腰掛けてボーっとしたり、ストレッチしたり、まるで共同浴場のよう。

室内中央にある湯船はゆったりとした大きさで、深湯と浅湯&ジャグジーに分かれている。隅にはもう1つ小ぶりな湯船があって、こちらは半分がタイル張りの電気風呂、半分が石づくりのオパール原石風呂。日替わり湯で「麻黄」と書いてあったが、名前通りの色をしている。お湯は若干ぬるめ。屋号に「温泉」とあるが、これは関西によくある名前の付け方で、実際に温泉を使用しているわけではない。ほかに小さなスチームサウナもあって、無料で利用できる。ありがたいサービスだと思うが、関西では無料が基本であるらしい。関東の銭湯に多く見られる背景画の類は一切なく、ここは天井までの白タイル。床や湯船には御影石の大判タイルが使われている。室内が広いぶん開放的で、明るい日差しが入ってくる。

昭和12年の建築で、当時2階はビリヤード場やダンスホールとして使用していたという。時代の最先端をいくハイカラな銭湯だったに違いない。そしてむかしもいまも銭湯は町の社交場だ。

源ヶ橋温泉(生野浴場組合)
大阪府浴場組合
源ヶ橋温泉浴場(国指定文化財等データベース)

源ヶ橋温泉
住所/大阪市生野区林寺1-5-33 [地図]
電話/06-6731-4843
交通/JR大阪環状線寺田町駅より徒歩8分
料金/大人410円、中人130円、小人60円
時間/15:00〜24:30、毎週月曜日定休