横浜ベイスターズ×阪神タイガース(横浜スタジアム)シーズンも残りわずかとなり、今年も上位争いとは無縁だった横浜は、来季に向けての若手の顔見せが始まった。とはいっても2軍の湘南シーレックスは、今年もイースタン優勝を狙える位置につけている。そう、毎年この図式なのだ。活きのいい若手を引っ張って来たいけど、シーレックスは優勝したい。ベテランをシーレックスの補強に回したいけど、そのベテランがふがいない。まさにジレンマ。そんな状況下で今日の阪神戦には、3年目の田中健二朗が初先発。かつてはエース三浦が付けていた、背番号46の若手に期待だ。対するはプロ20年目の下柳。年齢にして倍も違う大ベテランだ。

横浜ベイスターズ×阪神タイガース(横浜スタジアム)今季の球場観戦は18試合目だというのに、阪神戦は今季初。ファンの数で圧倒され、ホームなのにアウェーのような空気が漂うという、いちばん観戦したくない相手だ。試合開始の30分ほど前はレフトスタンドにも若干の余裕があったが、いざプレーボールとなる頃にはすでに立ち見が出ている。こうなると黄色いユニフォームの崎陽軒の売り子まで憎く見えてくる。なぜかライトスタンドにも金本ユニと赤星ユニが紛れ込んでいる。横浜ファンが紳士的だとはいえ、「勇気があるな」と言わざるを得ない。右も左もわからないと言うなら仕方がないけれど。

横浜ベイスターズ×阪神タイガース(横浜スタジアム)健二朗は立ち上がりに緊張したか、先頭打者のマートンをいきなり歩かせ、送りバントで2塁へ。そしてワイルドピッチで3塁へ。そこでマウンドに歩み寄り声を掛けたのは、石川でも村田でもなく、なんとカスティーヨ。そして、見事ピンチをしのぎ、「アチャいい奴!」と個人的評価も急上昇。下柳も初回にボークでランナーを3塁に進め、さらに村田を歩かせ、スレッジには2点タイムリー。2回には満塁から「わっしょい!わっしょい!」の掛け声が流れるなか、石川の当たりはもうちょっとでホームラン。この3点タイムリーなどがあり、下柳は1回2/3で早々と降板。2回終了時点で大量7得点、失ったのはブラゼルに浴びたソロHRの1点のみ。阪神相手に一方的リードで優位に立てるなど、なんだか夢のようだ。2回裏の攻撃で言えば、健二朗の送りバントに対して城島が2塁に送球エラー。また、初回の下柳×村田、2回の渡辺×村田の場面でいずれもフォアボール。試合を優位に進める材料は転がっていたのだ。

中盤は両チームとも動きがなく、おのずと観客の集中力も切れてきた。そんな中での7回表、阪神の攻撃。ノーアウトからヒット2本でランナーを2−3塁に抱えると、ここから小刻みな継投へ。しかし江尻−加藤康介−真田の3人をつぎ込んだにも関わらず、この回は4失点。続く8回は頭から牛田が登板するも、クリーンナップ相手に2つのフォアボールを出し、結局3つ目のアウトを取るのに山口を前倒しする始末。阪神の追撃ムードの大歓声に呑み込まれ、じっと耐え忍ぶ時間の長いことったら! 何点差だったらセイフティリードと言えるのか…。

横浜ベイスターズ×阪神タイガース(横浜スタジアム)横浜ベイスターズ×阪神タイガース(横浜スタジアム)

しかし最後は山口がきっちり3人で締め、7-5でベイスターズの勝利。そして田中健二朗のプロ初勝利!

石川と並んでヒーローインタビューを受けた健二朗は、「(両親の目の前での初勝利に)親孝行ができた」と。ベイスターズにとっても孝行息子のデビューと言ってよいのではないだろうか。本音を言えば7回のピンチをどう切り抜けるか見せてほしかったが、それまでの投球は初先発とは思えない堂々たるもの。来季に期待が繋がる内容だったし、阿斗里や祥万といった同期の刺激になっただろう。20歳の若武者も、将来は三浦のようにベイスターズを背負って立つ投手になってほしい。