西の湯(横須賀市久里浜)日本に開国を迫るため、黒船で来航したペリー提督。嘉永6年(1853)に浦賀に入港したのだが、実際に上陸したのは岬をはさんで隣接する久里浜だった。東京湾フェリーの乗り場の近くにはペリー公園が整備され、上陸記念碑が立っている。まさに開国の第一歩が刻まれた地であるが、いまでは路地裏まで住宅が建ち並ぶ沿岸の町。今回ご紹介する西の湯も、路地に面した庶民的な銭湯だ。

西の湯(横須賀市久里浜)平板の白いトタンを張り巡らせた外観で、然して特徴もない。まったく気づかなかったが看板は出ていたのだろうか。裏には建築現場で使用する足場などが積んであったが、兼業でペンキ屋でも営んでいるのだろうか。暖簾が唯一銭湯の証だが、暖簾をくぐると錦帯橋を描いたタイル絵が目に飛び込んできた。番台式の銭湯であるものの、昔ながらの銭湯であることを感じさせるのは、このタイル絵だけだった。脱衣所の天井には赤や白のパネルが貼ってあり、鍵つきのロッカーと脱衣カゴ、新旧2台のマッサージチェア、身長計、体重計といった具合。

浴室は白タイル&白ペンキで超シンプル。カラン4列と湯船3つなので、こじんまりとした印象を受けた。中央の島式カランにはシャワーも鏡もない。しかし、かつては鏡があったのだろう。両サイドのポールだけが残され、ぶつからないよう黄色のテープを巻いて目印としている。湯船はいずれも1.5帖ほどの大きさで、そのうち2つは深湯と浅湯ジャグジー(1人分)。もう1つは日替わり湯で、訪れた日は赤茶色の「温浴素じっこう」。カランも湯船もお湯はぬるめだった。小さな銭湯で、しかも客は少なくほぼ貸切状態。だからこそ余計に感じるのだろうか、田舎っぽさと素朴な雰囲気を。東京湾フェリーの乗り場までは300m足らずの距離。南房総で遊んで帰ってきたあとのひとっ風呂に便利だが、千葉県の人にもぜひ利用してほしいなぁと思う。

西の湯(神奈川県浴場組合)

西の湯
住所/横須賀市久里浜8-14-1 [地図]
電話/046-835-6574
交通/京浜急行京急久里浜駅よりバス約10分「久里浜港」停徒歩2分
     または京急久里浜駅より徒歩20分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/16:00〜22:00、毎月5・15・25日定休

久里浜観光協会
東京湾フェリー