宇佐美ヘルスセンター(静岡県伊東市宇佐美)宇佐美は伊東市北部、電車だと伊東駅より1つ熱海寄りに位置する町。この地域から湧出する温泉は宇佐美温泉と呼ばれるが、旅館や民宿が数軒あるのみで、町としての規模は伊東とは比べようもなく小さい。国道135号線から駅へと続く商店街は、夜になると殆どがシャッターを下ろしていて、人影もなく寂しい。駅前のタクシー会社わきの路地を入っていくと、周囲は民家が建ち並ぶが、その突き当りの1軒からは煌々と明かりがもれている。看板もなく一見しただけでは何の商売かわかりにくいが、ガラス越しに中をのぞいてみると暖簾が2つかかっていた。銭湯好きや温泉好きならばピンとくるだろう。ここが宇佐美ヘルスセンターで、室内のどこにも屋号は見当たらないのだが、少なくともインターネット上ではそう呼ばれている。

宇佐美ヘルスセンター(伊東市宇佐美)建物は普通の木造2階建で、ヘルスセンターを連想させる娯楽施設は見当たらない。2階に通じる階段があったから、昼間は休憩室として開放しているのかもしれないが、聞くのを忘れてしまった。温泉の成分書と営業時間を記したA4版の紙が貼ってあるのみで、脱衣所の暖簾には男女の区別すら書いていない。共同浴場あるいは銭湯という表現がふさわしいか。受付のおばちゃんに駐車場を尋ねたら、その対応は意外とつっけんどん。地元客の利用が殆どで、観光客がふらっと立ち寄ることなんて珍しいのだろう。看板もあえて出すまでもない、ということか。

脱衣所に設けられたロッカーの多くは鍵がなくて使えない。扉が外れている箇所に脱衣籠を突っ込んだり、床に置きっぱなしだったりする。壁には温泉の効能が大きく書かれている。「この温泉は自噴のままで加熱して水でのばすなどすこしも人工を加えてありません。温度も熱からずぬるからずいつも一定の良い温度でその上諸病によく効目があって然も無色透明、無臭の世に自慢できる温泉です」。その日付を見ると昭和3 年とあるが、丗なんて字を見るのは久しぶりだ。

浴室はカラン5つと6帖大の湯船が1つあるのみ。シャンプーやボディソープなどの備え付けはもちろんなく、持参するか受付で購入する。床や湯船の底のタイルはところどころに補修跡があり、浴室の隅には聖火らしきものを持った少年の裸像が飾られている。こんなところからも年季を感じとることができる。湯船からはお湯が絶えずあふれており、温度もちょうど良くて気持ちがいい。おばちゃんに聞くと、源泉は敷地内から自噴しており、単独で使用しているとのこと。泉温が44.2℃だから時期によっては若干加熱しているかもしれないが、限りなく源泉そのものを堪能することできる。相客が入れ替わりで1人2人いたので自重したが、誰もいなければ横になって寝てしまいたい雰囲気だ。

伊東市街地には共同浴場がたくさんあるが、宇佐美ヘルスセンターの存在も皆さんにはお知らせしたい。訪問前は名前からしてどんな施設だろうと不思議に思っていたが、思いがけず普通の、むしろ期待以上の施設であった。

宇佐美ヘルスセンター
源泉/宇佐美温泉(カルシウム−硫酸塩・塩化物泉)
住所/静岡県伊東市宇佐美1849 [地図
電話/0557-48-9270 
交通/JR伊東線宇佐美駅より徒歩2分
     国道135号線より宇佐美駅方面。タクシー会社わきの路地は幅員狭く通行注意。
     近隣に無料駐車場あり。場所は問い合わせを
料金/大人350円、小人180円
時間/14:00〜20:00、毎週月曜日定休