正木温泉(千葉県館山市正木)千葉県に数ある鉱泉の中でも、コアなファンの間で話題となっているのが館山市の正木温泉である。内房の海岸線を走る国道127号線(館山バイパス)で館山市に入ったら、那古交差点を東へ。カーナビを頼りにして向かったので、ここからの道は説明しにくいのだが、ヒントは「神河鉱泉800m」という看板。だが、これはよその施設の案内看板で、そこに至る田舎道の途中に正木温泉はある。普通の温泉施設を想像して訪れるとそれは大きな間違いで、現地はどう見ても個人の住宅。入口に看板があるのが救いだが、その料金表示にいたっては何度読んでもよくわからない。広い敷地には数台分の駐車スペースがあり、建築資材?などが仕舞いきれていない作業小屋は、それ自体が手づくり感があふれている。奥には本宅と思われる瓦葺の木造住宅があって、そこに隣接してなんだかよくわからない建物が続いている。と思ったらここが温泉の施設であるようだ。勝手口のようなドアにどうしたものかと躊躇していたら、中からおじいさんが出てきた。

正木温泉(千葉県館山市正木)正木温泉(千葉県館山市正木)正木温泉(千葉県館山市正木)

言われるままに550円(50円は入湯税らしい)を支払い、浴室を案内される。2つ並んだ建物の間が浴室への通路となっており、仮設的に屋根がかかっている。浴室は本来3つあるらしいが、女湯は現在修理中とのこと。男湯は大小2つあり、どちらを使っても良いというので、それならばと大きな浴室へ。この2つの浴室の間、わずか畳1帖分のスペースが脱衣所とのことだが、手づくりの棚に籠がいくつか置いてあるのみ。というよりこの建物はすべての部分において手づくり感がありありなのだ。

正木温泉(千葉県館山市正木)正木温泉(千葉県館山市正木)かたい扉をようやく開けると、昭和にタイムスリップしたかのような浴室にしばしたじろいでしまう。市松模様のタイルと竹の壁。丸窓が赤線地帯のカフェーのようでもあるが、実はこの窓、飾りなので開かないし、ガラス代わりに塩ビ板を貼っている。薄暗い室内は、通路と隣室上部から漏れてくる明かりに頼るのみ。隣室、すなわちおじいさんの部屋からはテレビの声が大音量で聞こえてくる。おじいさんだから耳が遠いのか、それともテレビの音を聞かせてあげようという配慮なのだろうか。浴室内で唯一現代風の設備といえば給湯器のパネルスイッチで、運転ボタンを押さないとシャワーにお湯は出ない仕組み。コンクリートづくりの湯船はかなり深めで、薄茶色のお湯が張ってある。さらっとした肌ざわりで、黒豆茶のようなにおい。

療養目的で訪れる人がたまにはいるのだろうか。あちこちに書いてあるが「1日2-3回入浴」「7?-15日-1ヶ月」がいいらしい。半日や1日の料金設定もあるから、どこかに休憩室があるのだろう。いくら療養泉として名高いとしても、このディープな雰囲気を受け入れるには、よほどの柔軟性もしくは複数回の訪問を必要とするのではないだろうか。神奈川県葉山町の「星山温泉・稲龍神山スポーツランド」(→記事)と同様の空気が漂っていた。B級スポットとしても風格はじゅうぶんだ。

正木温泉
源泉/正木温泉(含硫黄−ナトリウム−炭酸水素塩・塩化物泉)
住所/千葉県館山市正木3027 [地図
電話/0470-27-4614
交通/JR内房線館山駅よりバス「正木下」停徒歩15分
     国道127号線「那古」交差点より県道296号線で約1,100m
料金/1回入浴500円、半日600円、1日1,000円
     ※入湯税50円別途
時間/9:00〜21:00、年中無休

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  いかす温泉天国「房総半島の田舎っぺ温泉へ」
  (まぼろしチャンネル)