天成園(箱根町湯本)箱根湯本の天成園が「箱根初の23時間営業」を掲げ、昨年12月16日にリニューアルオープンした。天成園は昭和20年の創業で、小田原城主稲葉氏の別邸跡に建てられた旅館。約1万3600坪に及ぶ敷地内には玉簾の滝、飛烟の滝といった名所もある。歌人与謝野晶子や俳人荻原井泉水らが訪れたことでも知られる老舗だが、このほど全国で温浴施設を展開する万葉倶楽部のプロデュースによって大きく生まれ変わった。日帰り入浴の大人2,400円は強気の設定だが、深夜0時以降の追加料金1,570円を支払うことで朝9時まで滞在が可能。また、243室ある客室は1泊2食12,000円〜という箱根ではリーズナブルな料金で宿泊も可能。オープンから1ヶ月経ってそろそろ客足も落ち着いた頃だろうと思い、話題の温泉施設を訪れてみることにした。

天成園(箱根町湯本)天成園(箱根町湯本)天成園(箱根町湯本)

箱根湯本駅より滝通りの旅館街へ。天成園は須雲川に面して建っている。7階建の建物は新築され、その総事業費は約65億円というからこのご時世に思い切ったものだ。玉簾橋側から見上げればどこにでもありそうな巨大ホテルの趣だが、裏手の湯坂山側に回ってみると、現代和風に整備された庭園の趣にギャップを感じるだろう。そのなかでも見所といえば玉簾の滝、飛烟の滝。そして箱根神社の唯一の分宮で、江戸時代に創建されたという玉簾神社にも立ち寄りたい。奥には本格的な回遊庭園もあり、湯上りに散策するのも楽しい(冬は寒いが)。夜の幻想的なライトアップもまた格別だ。

天成園(箱根町湯本)天成園(箱根町湯本)

日帰り入浴と宿泊の受付を行っているのは1階のカウンター。日帰り入浴の場合はここで浴衣やタオルがセットになったバッグを受け取る。浴衣は男性は1種類だが、女性は5種類から選ぶことができる。入館料は先払いで、館内での飲食はロッカーキーを兼ねたリストバンドでチェックし、退館時に精算する。浴室は女性が6階、男性が7階にある。脱衣所のロッカーはジャケットが掛けられる縦長タイプだが、もうちょっと幅があったら良かった。冬はコートを仕舞ったら、あとは押し込む感じになってしまう。観光で箱根を訪れる客は、近所のスーパー銭湯を訪れる客に比べて荷物が多いはずだが。

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浴室はモノトーンの内装で、淡い照明を多用した落ち着いた雰囲気。中央に個別ブース型の洗い場が4列並び、その両側に大きな湯船、左手前側にはサウナが配置されている。湯船はいずれも大きな窓に面し、一方は滝通りの旅館街、もう一方は庭園を眺める。お湯は循環かけ流しの併用。天成園では敷地内に源泉を所有しているが、現地看板によるとその本数が4本なのに対し、ホームページでは3本。最も湧出量が多いのは地下227mから湧出する湯本45号泉だそうだが、現地看板では泉温47.5℃・毎分180リットルなのに対し、ホームページでは45.9℃・毎分142リットル。いったいどちらが正しいのか。無色透明でとくにクセもないが、かすかな塩素臭は気づくかどうか。サウナは湿式と、テレビを備えた乾式の2種類。ほかに水風呂もある。ナイロンタオル、カミソリ、歯ブラシは浴室内に用意してある。

天成園(箱根町湯本)
(箱根小田原Walker 09-10版より)

露天風呂も滝通り側と庭園側にそれぞれ大きな湯船を配し、奥には直径3mほどの陶器風呂が2つ並ぶ。滝通り側の湯船はふちに石を並べた岩風呂風で、一部にはジャグジーを設けている。庭園側はタイル張りで、屋根の有無で2つに区切られている。高層階だけあって開放的で、吹き抜ける風が冷たく感じる。内風呂同様お湯はかけ流しなのだが、通路側に溢れるわけではないため、ちょっと歩くと足の裏が冷たくて仕方ない。肝心の景色だが、もちろん浴室内よりも眺めがいい。滝通り側は道向かいにホテルが建っており、目を凝らせば客室の様子もうかがえる。ということはその反対もあるのだが。すだれが申し訳程度に目隠しとなっているが、施工が雑なのは暫定的な設置だからだと思いたい。庭園側は正面に湯坂山の雑木林を、眼下には庭園を眺める。女湯ではすだれの隙間から滝を見下ろすのだという。もちろんこれらの眺めも飽きないのだが、ふと見上げてみると空の広さを実感するはずだ。とくに夜は星空を間近に感じることができる。

天成園(箱根町湯本)休憩室兼食事処は2階にある。中規模の和室が喫煙と禁煙で交互に並び、その室内にはテーブルがいくつか備えられている。無料休憩室なので飲食の注文をしなくても良いのだが、何か頼まなければ悪いような雰囲気でもある。コーラが370円もすることにげんなりするが、館内に自販機の設置はない。食事はメニューからの注文以外に、バイキング形式で選ぶこともできる。しかし料理はありきたりで品数は少なく、味も改善の余地ありと言わざるを得ない。

リラックスルームは3階にあって、室内には個別テレビを備えたリクライニングシートが並んでいる。ここが健康ランドでいうところの仮眠室。入口には「席を15分以上離れた場合、係員が荷物を預かることがあります」という注意書き。定期的に監視しているふうではないが、さりげないプレッシャーだ。52席しかないので、繁忙期は明らかに数が足りなそうな気がするし、宿泊するなら客室の利用も検討しなければならないだろう。

天成園のオープン記念として清水アキラショーが3月末まで連日開催されている。なのに運悪く休演日だった。館内には清水氏の描いた絵画も多数飾られ、意外な才能を知るとともに、天成園との付き合いの深さを実感した。今後はどのようなイベントが行われるのだろうか。万葉倶楽部プロデュースとのことで、どことなく似た雰囲気を感じる点もあるが、観光地箱根の地域性や独自性は今後も尊重していただきたい。

リーズナブルに旅行したい人にとっては小田原お堀端万葉の湯のほかに選択肢が加わったといえるし、宿泊費で検討するなら一の湯グループ四季倶楽部などが比較対象となるだろう。日帰り入浴を前提とするならば、価格帯や館内設備の充実度からして湯の里おかだ楽遊壽林自然館てのゆなどが比較対照になるのかもしれない。いずれにせよ箱根湯本に誕生した新しいスタイルは、今後の温泉地のあり方を占う道しるべだと言える。しばらくは注目を集めることであろう。

天成園
源泉/湯本温泉(単純温泉)
住所/足柄下郡箱根町湯本682 [地図
電話/0460-83-8500
交通/箱根登山鉄道箱根湯本駅より徒歩12分
     国道1号線より滝通り旅館街へ(須雲川沿い)
     ※駐車場は5時間まで無料、以降30分毎に100円加算
      宿泊の場合は1泊につき1,000円
料金/大人2,400円、子供1,250円(小学生)、幼児940円(3歳〜未就学児)
     深夜料金:大人1,570円(深夜0時以降)
時間/10:00〜翌9:00(23時間営業)、年中無休