水口第二共同浴場(熱海市水口町)熱海市水口地区に2軒ある共同浴場のうち、来宮駅寄りにあるのが水口第二浴場だ。ただでさえ熱海の共同浴場は見つけにくい場所ばかりだというのに、ここにいたっては見つけてくださるなと言わんばかりの立地だ。周囲は住宅街であるため道は狭く、昼も夜も人通りはまばら。目印は肉屋で、そのわきの幅1mほどの路地の先にあるのだが、表通りに看板はない。ほとんどが地元住民の利用だろうから、看板など不要なのだろう。夜は人の気配を感じると、センサーが路地を照らしてくれるのがありがたい。見るからに地元住民専用な雰囲気だが、観光客の利用も可能。

水口第二共同浴場(熱海市水口町)路地の突き当たりに男湯と女湯のドアが並んでいる。開けるとすべてが見渡せるほどに、狭い浴室だった。脱衣スペースと洗い場を隔たる仕切りなどなく、湯船まで含めて1つの空間に収まっているのだ。その広さは間口1.25間、奥行1.5間、すなわち4畳弱。近所の谷口商店で購入した入浴券(裏表に名前を記入する)は、下足棚のわきの箱に入れる。脱衣スペースには3×3の棚と足拭きマットがあるのみで、実質半畳ほど。窮屈な感じで服を脱ぎ、洗い場では脱衣スペースを濡らさぬよう、細心の注意を。

水口第二共同浴場(熱海市水口町)おじさんがひとり入浴中で、湯船に水を勢いよく入れていた。おじさんいわく源泉は90度ほどの熱湯で「最初に源泉を一気に入れてやると雑菌が死ぬんだよ」と。それじゃ熱くて入れないから「今度は水で調整するんだ」とのこと。身近に温泉がある生活だと、「水で薄まってもったいない」なんていう発想がないのかもしれないし、これまで入った温泉もそうだったが、熱海の人は意外とぬる湯好きなのかもしれない。この頃は近所も建て替えて家に風呂があるのが当たり前で、利用者はだいぶ減ったらしい。そして「ここもいつまで続くかなぁ」と。

ひとしきりおしゃべりしたあと、おじさんは「よく温まっていきなよ」と言い残し、パンツ1枚の格好で帰っていった。「家はすぐそこ」なのだとか。思いがけず地元の人情にふれ、印象深い入浴体験だった。関東近郊の大温泉地として知られる熱海だが、温泉街をちょっと外れると超ローカルな雰囲気が残っている。なかなか熱海も奥深い。

水口第二共同浴場
源泉/熱海温泉
住所/熱海市水口町 [地図
交通/JR東海道本線熱海駅より徒歩20分、伊東線来宮駅より徒歩4分
料金/300円
時間/14:00〜22:00、毎週木曜日定休

水口第二共同浴場(熱海市水口町)裏手の路地から撮影

(追記-2015/10/16)
すでにツイッターなどで話題となっているが、建物の老朽化や入浴者の激減といった理由により、水口第一・第二共同浴場は今年12月31日をもって営業を終了する。


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