最近では観光プラス温泉をモットーにあちこち旅行しているが、名古屋市内については温泉の情報を何も持ち合わせていなかった。携帯電話のネット機能で検索してもよいのだが、土地勘のない場所では余計に混乱してしまう。カーナビでは温泉地の情報は出るものの、個別施設についての情報は乏しい。結局は本屋を訪れ、ガイドブックを立ち読みして情報を入手した。市内には日帰り温泉施設やスーパー銭湯が数店舗あるようだが、チェーン店を訪れたのでは面白みに欠ける。そうしたところ、強烈に目に飛び込んできたのが「大名古屋温泉」であった。なにしろ名前にインパクトがある。すぐさま目的地にセットし、いざ現地へ。

大名古屋温泉(名古屋市中川区横井)名古屋市西部の庄内川の近くに大名古屋温泉はある。敷地のすぐ南側を関西線と近鉄が走る。「ホテルに併設」という記載に、気楽さはないのかなと勝手に想像していたが、健康ランドを思わせる大衆的な外観にまず拍子抜け。一般的にイメージする日帰り温泉施設とはちょっと違うし、ましてやホテルとも違う。名古屋も大都市なだけに温泉施設の競争も激しいとは思うのだが、完全にわが道を行っちゃっている感じだ。穴場スポットを見つけてしまったようで、なぜだかわくわくする。

大名古屋温泉(名古屋市中川区横井)玄関わきの券売機で入浴チケットを購入するが、すぐそばでおじさんが待ち構えている。形式的にフロントがあるにもかかわらず、だ。「浴室はこちらです」「タオルは持ってますか?」「脱衣所のロッカーは100円必要ですよ」とやたらと親切に教えてくれた。館内をじっくりと見渡す暇を与えてくれず、促されるままに浴室へ。わずかな距離の廊下を経た別棟に浴室があり、廊下からはきれいに手入れされた中庭を挟んでレストランが見える。脱衣所は広めに作ってあり、数多くのロッカー(100円返却式)が並んでいる。

浴室に入って驚くのは、湯船の大きさと湯量の豊富さだ。16m×8m、深さ90cmという湯船はまさにプール感覚であるが、「泳がないでください」との注意書きがあるため、歩行浴として利用するほかない。団体客が一度に入浴すれば、俗に言う「千人風呂」の雰囲気であろうが、平日の昼間だったためか相客はおじさんばかり4〜5人。とにかくがらーんとしており、大きな湯船もこれではもったいない。ほかにはバイブラ湯、ジャグジー(3人分)、電気風呂、打たせ湯(2人分)もある。一部を循環しているようだが、お湯は掛け流し。しかもかなりの量があふれ出ている。浴室は一面がガラス張りで、窓の外は日本庭園風の趣。そんな景色の反対側には露天スペースが設けられ、直径4mほどの円形湯船のほかはベンチとビーチチェア、そして楓の木々が植栽されている。周囲の景色は望めず、たまに電車の走行音が聞こえるのみ。ゆったりとしすぎている感も否めず、ほかに寛げる何かがあったら…という気がしなくもない。そういえば浴室内の壁の一部はまるでピカソのような構図のタイル画であったが、その一部分にはしゃちほこが描かれていた。さすが名古屋である。

館内のあちこちに掲示してある新聞の切り抜きによると、大名古屋温泉は昭和47年に地下1,100mから湧出したのだとか。名古屋市内のほかの地区では冷鉱泉しか湧出しないのか、ここは「市内唯一の高熱天然温泉」だという。といっても源泉の湯温は45℃(脱衣所内の成分分析表では42℃とあるが…)。「かすかに硫黄のにおい」「下呂温泉の泉質に近いと評する人も」などと新聞では紹介しているが、感じ方は人それぞれだと思う。とはいえ、カランにも源泉を使用しており、すべすべした肌ざわりをしっかりと実感できた。大衆的な温泉だからと高をくくっていたが、温泉の良さは期待以上だった。

大名古屋温泉(名古屋市中川区横井)風呂上りに館内を見て回る。浴室棟は平成11年のリニューアル時に完成したそうだが、それ以外の部分はひと昔前の館内設計をそのまま引きずってきている。1階の休憩所のソファでおじさんが寝ているのはわけがわかんないが、隣接するちびっ子向けゲームコーナーを含めてえらく閑散としていた。フロントわきの土産物コーナーはなぜか乾物ばかり。ターゲットにしている客層がよくわからない。2階にはいずれも畳敷きで大宴会場と休憩室がある。日帰り客に開放しているのは休憩室のほうで、だだっ広い室内にごろ寝しているのは僕を含めて3人。なんともったいないことか、と思う。2階の一部と3階はホテルの客室で、宿泊費は10,500円(素泊まり5,800円)とのこと。どの程度の稼働率か知らないが、この施設は団体客があってこそ利用価値を発揮できるように思う。いっそのこと24時間営業の健康ランドにしてしまったらどうか、とすら思うがいかがなものか。もちろん現状の穴場的路線を突っ走ってもらっても一向に構わないし、時代に迎合しないスタイルもまた魅力的であるとは思う。

大名古屋温泉
源泉/大名古屋温泉(単純温泉)
住所/愛知県名古屋市中川区横井2-75 [地図
電話/052-411-1577
交通/JR関西線・近鉄名古屋線八田駅より徒歩15分
     八熊通り・県106号線「新前田橋東」交差点より約800m
     ※無料駐車場あり
料金/大人850円、小人300円、幼児100円
     (16:00以降)大人550円、小人300円、幼児100円
時間/9:00〜22:00、毎週月曜日定休(祝日の場合は翌日)

大名古屋温泉パンフレット