酸ヶ湯温泉(青森市)酸ヶ湯温泉(青森市)酸ヶ湯温泉(青森市)

青森市中心街より南へ約30km、酸ヶ湯は八甲田山中の主峰大岳の西麓にある温泉だ。標高925mの高所であるため、そこに行くまでの道は5月初旬といえども、沿道には背丈以上の雪が残っていた。そして、旅館の建物のすぐ脇の斜面にもスキーヤーの姿。ぽつりと建つ一軒宿であるが、その規模は大きく、正面右側には蕎麦屋を併設している。広大な駐車場は連休中とあってほぼ満車。温泉を目当ての客に加え、ドライブイン的な感覚で立ち寄る客も多いようだ。

酸ヶ湯温泉といえば「千人風呂」である。下田河内温泉の金谷旅館や上諏訪温泉の片倉館など、「千人風呂」は全国各地にあるが、酸ヶ湯の千人風呂もまた素晴らしい。総ヒバ造りの大浴場は男女混浴で、湯治場の雰囲気が味わえる。JR東日本のポスターで記憶している方も多いことだろう。

その千人風呂が呼び物であるが、それに加えて男女別浴の「玉の湯」もある。券売機での支払い方に戸惑うが、入浴できるのはどちらか一方だという。「ちらっと覗いて、混浴が無理だと思ったら玉の湯へどうぞ」と番頭さん。せっかく来たのに千人風呂に入らないのはもったいないと思うが、断念して玉の湯に移動する女性も多いようだ。ちなみに酸ヶ湯では有志が「混浴を守る会」を結成し、マナー向上へと活動を行っている。

酸ヶ湯温泉の千人風呂

多くの客でごった返した脱衣所を抜けると、160帖あるという広い浴室にまず驚くはずだ。床から壁、天井に至るまですべてが木造で、射しこむ光と湯気によって一段とつやが出ている。温泉場としての歴史と都会にはない素朴さを感じさせてくれる。手前に「熱の湯」、奥に「四分六分」と名づけられた湯船があり、老若男女で和気藹々とした雰囲気だ。2つの湯船は小さな標識に従い、男性と女性が左右に分かれて入浴するようにと決められているが、間仕切りなどでの区分はない。圧倒的に男性が多いため、なんとなく越境しないようにとの努力目標にしか過ぎない。女性がこの状況に圧倒され、すぐに出て行ってしまうのも無理はない。ちなみに女性専用の時間帯もあるが、8:00〜9:00、20:00〜21:00の1日2回だけ。日帰り利用ならば、おのずと朝に限られてしまうが。

「熱の湯」と「四分六分」は泉源が異なるようだが、どちらも青みがかった乳白色のにごり湯。熱の湯は湯船の底から源泉が湧き出しており、新鮮なお湯が楽しめる。湯温は40〜42℃といった感じ。むしろ熱いのは四分六分だったりするからわけがわからない。こちらには飲泉せよとばかりにコップが置いてある。試しにひと口含んでみると、レモネードのような酸っぱさにビックリした。それもそのはず、pH1.9の強酸性なのだ。酸ヶ湯とは言い得て妙だが、もともとは「鹿湯」が訛ったのだという。その字のごとく、傷ついた鹿がこの湯で治したという由来による。

これらの湯船に千人が同時に入浴できるか?などはこの際どうでも良いことで、実際は湯船のふちに腰掛け、足だけつかっている人が多い。脱衣所の注意書きにもあったが、「入浴中は浴槽から出てひと休みなどしない」とのこと。「苦痛になったら腰湯・立湯・足湯、あるいは手湯ととにかく体の一部をお湯に入れる」とあるから、入浴も真剣勝負だ。「湯滝」に打たれるのも気持ちがいいし、ぬるい「冷の湯」で掛け湯するのも気分転換になっていい。

温泉として素晴らしいのはもちろんだが、大浴場の光景はじっくりと目に焼き付けておきたい。この広さ、そして渋い雰囲気はなかなか味わえるものではない。

酸ヶ湯温泉
源泉/酸ヶ湯温泉(酸性硫黄泉)
住所/青森市荒川南荒川山国有林酸湯沢50 [地図
電話/017-738-6400
交通/JR東北本線青森駅よりバス1時間12分「酸ヶ湯温泉」停下車
     青森自動車道青森中央ICより国道103号線で約40分
料金/大人600円(中学生以上)、小人300円(小学生)
     休憩付入浴(日帰りセンター8:00〜15:00):大人1,000円、小人500円
時間/大浴場7:00〜18:00、玉の湯9:00〜17:00