矢部の湯(横浜市戸塚区矢部町)戸塚といえば東海道の宿場として古くから賑わった町だが、戸塚区に現在ある銭湯は今回紹介する「矢部の湯」のみ。戸塚駅東口より北に真っ直ぐ歩き、国道1号線を右折。交差点の角から3軒目、わずか4分の距離なので、買い物や帰宅ついでに気軽に立ち寄れる場所だ。新旧混在した町において、矢部の湯は旧の代名詞とも言える店構え。昭和35年の開業時から変わっていないようだ。

番台でロッカーの鍵を受け取る。脱衣所は折上格天井のクラシカルな雰囲気で、室内中央に島式のロッカー、壁側に常連用の貸しロッカー、ほかにジュースのショーケース、コイン式のドライヤーなどがある。余計なものはなく、すっきりと片付いている。昼間だと高い位置に設けられた窓から明るい光が射し込み、より一層広々としているように感じる。

浴室は一般的な銭湯よりも間口が広いため、カランは8、5-5、5-5、7といった具合に島カランが2列設けられている。シャワーが付いているのは間仕切壁側の8つのみ。島カランにいたっては鏡すらなく、また脱衣所同様に外からの光もたくさん差し込むので、浴室自体も広々としているように感じた。男湯のみ屋根の折り目には梁を、その梁から室内中央に柱が1本足されているが、屋根がたわんでしまったためだろうか。木造建築で、しかも大スパンだから維持するのも大掛かりだ。

湯船はいずれも2帖ほどの大きさで3つある。そのうち2つはバイブラ湯で、勢いが弱くてぬるめ、強くて熱め。そしてもう1つの湯船は、日替わり湯なのかオレンジ色の「温浴素じっこう」。生薬のにおいがわずかに漂う。湯船の上には西伊豆堂ヶ島から眺めた富士山のペンキ絵で、今年4月に亡くなった早川利光師による。描いたのは平成18年だから、あと数年は目にすることができるが、いずれ塗り替えられてしまうのだろう。間仕切壁には松島や壇ノ浦などを描いたタイル絵も4枚並んでおり、こちらも見ごたえあり。特別な設備はないものの、明るくゆったりとした浴室のおかげで、のんびりと入浴することができた。駅からほんのわずかな距離なのに、賑やかさやせわしなさとは無縁の空間だった。

矢部の湯(神奈川県浴場組合)
矢部の湯(横浜市浴場組合)

矢部の湯
住所/横浜市戸塚区矢部町4 [地図
電話/045-881-6954
交通/JR東海道線・市営地下鉄戸塚駅より徒歩4分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/14:00〜24:00、毎週月曜日定休