能見堂赤井温泉能見堂赤井温泉があるのは、金沢文庫駅より北西方向に約10分歩いたところ。西口の横浜銀行横から伸びるバス通りより、赤井バス停(赤井町内会館)を北へ。赤井不動尊の正法院を過ぎたら、すぐ左手にある。住宅やアパートが混在する古くからの住宅地の一画で、失礼を承知で言えば田舎の集会所のような佇まい。「赤井」とはこのあたりの旧地名であり、むかし井戸を掘ったら赤い水が出てきたということに由来するようだ。そして「能見堂」とは、直線距離で400mほど北方にかつてあった地蔵院のこと。元禄時代に能見堂から詠んだ八景が「金沢八景」の起こりで、能見堂があった高台が「能見台」と呼ばれる一帯。能見堂赤井温泉の最寄駅は能見台ではなく、金沢八景でもなく、金沢文庫。なんだかややこしい。

能見堂赤井温泉(横浜市金沢区釜利谷東)組合加盟の銭湯であるが、日中は「温泉タイム」として銭湯料金より150円高い入浴料金で営業している。銭湯としての営業は15:30から。「温泉タイム」だと2階大広間での休憩が可能だが、浴室の設備的には「銭湯タイム」と変わりがない。綱島ラジウム温泉東京園のような営業形態である。

館内はフロント式。ロビーにソファやテレビがあるので、こちらでも寛ぐことが可能だが、脱衣所もまたゆったり広々。テーブルや椅子、年代物のマッサージチェアなどが置かれている。湯上りにのんびりと過ごすおじいさんも多く、銭湯というより田舎の温泉施設の雰囲気に似ている。ロッカーは数多くあるのだが、あえて籠を使う人も多い。年齢層がわりと高めであるせいか。

浴室は手前にカラン、奥に湯船という典型的な銭湯のスタイルであった。カランの配置は6、5-5、5で、固定式のシャワーがあるのは両側の壁側だけ。銭湯タイムになってすぐに訪れたのだが、おじいさんたちでカランの半分が埋まっていた。湯船のふちや床に腰掛けておしゃべるする人も多く、地元の社交場としてさっそく繁盛している様子。女湯からもおばちゃんたちの賑やかな話し声が聞こえてきた。

お湯は横浜特有の黒湯。しかもカランやシャワーから出るお湯も温泉なので、やや黒味がかっている。毎分572リットルと豊富な湯量のおかげだろう。湯船は3つに区切られており、それぞれ1.5帖ほどの大きさ。1つは深い湯船で、ほか2つは浅い湯船(ジャグジーとバイブラ)。見た目は真っ黒だが、実際には15cmほどの透明度。黒湯特有の油くささがないのは、循環処理と塩素消毒を行っているためか。お湯はあふれそうなくらいたっぷりと入っており、じりじりと熱いくらい。温度計では44℃を指していたが、「今日は熱くて入れないじゃんか」なんていう会話が聞こえてきたので、普段はもうちょっとぬるいのかもしれない。浴室入口側に水風呂もあるが、こちらでも温泉を使用している。源泉は17.9℃なので、もしかしたらそのままの温度で使用しているのかも。

3つ並んだ湯船の裏側、奥まった空間にはもう1つ湯船がある。こちらは温泉を使用していないが、40℃のぬるい強力バイブラ湯が楽しめる。カランも2つあり、隠れ部屋的な雰囲気だが、利用する人はほとんどいない。せっかくいい温泉があるのに…、ということだろうか。

常に入れ替わりで浴室は賑やかだったが、皆さんの滞在時間は総じて長い。お湯につかったり身体を洗ったりというより、休んでいる時間が長いのだ。やっぱり田舎の温泉施設みたいな雰囲気だ。もっと言ってしまうと湯治宿みたい。横浜でこんな雰囲気を味わえるなんて!しかも銭湯で!なかなか面白いし貴重だと思う。

能見堂赤井温泉(神奈川県浴場組合)

能見堂赤井温泉
源泉/横浜温泉(赤井温泉:ナトリウム−炭酸水素塩・塩化物泉)
住所/横浜市金沢区釜利谷東3-9-51 [地図
電話/
交通/京浜急行金沢文庫駅西口より徒歩10分
     無料駐車場12台分あり
料金/(温泉タイム)大人600円、子供200円、休憩は別途500円
     (銭湯タイム)大人450円、中人180円、小人80円
時間/(温泉タイム)10:30〜15:30
     (銭湯タイム)15:30〜22:00
     毎週月曜日定休(祝日の場合は翌日)

(追記-2009/12/23)
温泉タイムの料金が変更になっていました。大人550円→600円

(写真追加-2010/01/31)
2枚目に掲載した写真は脱衣所入口にある宝船のタイル絵です。

(追記-2017/4/4)
公式サイトでは休業中と記されていますが、施設老朽化により建物は解体され、現在は更地となっています。