六龍鉱泉(東京都台東区池之端)東京だと大田区に温泉銭湯が集中しているが、今回紹介する台東区の六龍鉱泉は鉱泉を使用した銭湯。上野動物園西側の動物園通り(外周の道)より、路地をわずかに入ったところにある。唐破風を持った典型的な銭湯建築に、居住スペースと思しき上階を組み合わせたつくり。通りに面したブロック塀の上に波板を付け加えたのが美的に惜しい気もするが、住宅が密集しているので仕方がない。玄関口の左右に出入口の扉があるのだが、時代のニーズなのか番台からフロントに改装されていた。タオルとボディーソープ、シャンプーのセットは破格の100円で販売しており、観光ついでの客が多いことを感じさせる。

六龍鉱泉の開業は昭和6年だという。脱衣所には「試験検査書」が掲示されている。鑿泉水の療養泉適合と鉱泉の定量分析の検査結果で、昭和6年に東京市衛生研究所が発行したもの。いまで言うところの温泉分析書だ。鑿泉水というのはいまは使わない言葉だが、“鑿”は穴を開ける道具のノミのことで、掘削泉という意味。治療に適した鉱泉(療養泉)というお墨付きだ。ところで、現在の温泉法によれば、泉温25℃以上、または含有成分のうち1つでも基準を満たせば温泉と名乗ることができる。六龍鉱泉も新たに分析すれば温泉に該当するのではないだろうか。

六龍鉱泉(東京都台東区池之端)六龍鉱泉(東京都台東区池之端)六龍鉱泉(東京都台東区池之端)

脱衣所にあるのは体重計、テーブル、丸椅子。いたってシンプルだが、ジュースのほかにアイスのショーケースがあるのは珍しい。脱衣所と外の路地に挟まれた空間は、築山に池を配した坪庭。脱衣所と浴室との間仕切りとなる側の欄間窓には、屋号とともに丸に桔梗の紋がすりガラスに描かれている。昭和の銭湯の懐かしい雰囲気が残っている。

浴室の左右壁際にはシャワーを備えたカランが並び(固定式・ホース式が交互)、中央に島式のシャワーなしのカランが2列並ぶ。通路確保の関係か、うち1列は片側のみにカランを設置し、鏡すらも付いていない。全部で37のカランがあるが、平日の夕方で埋まっていたのは3分の1ほど。地元住民が多いようだが、観光がてら訪れたと思われる客もいる。

身体を流していよいよ湯船へ。4帖ほどのバイブラ浴槽と2帖ほどの浴槽に区切られており、両方とも鉱泉を使用している。黒湯なのだが、横浜の温泉ほど真っ黒ではなく、コーラのような褐色味を帯びている。さて入浴と思ったら、これがものすごく熱い。「江戸っ子の熱湯好き」とは言うが、それにしても限界を超えている。引き下がるわけにはいかないので、意を決して身体を徐々に沈めてみるが、本当に熱いときは「熱湯コマーシャル」のようにはならない。手足を伸ばそうものなら皮膚の表面積が大きくなるので、熱さがじりじりと突き刺してくる。バイブラ湯だからこんなに熱く感じるのだろうと思い、隣の浴槽へ。こちらは底が深く、もっと熱く感じる。温度計が指す48℃という数字に目を疑ったが、たちまち赤く茹で上がった身体を見て、そりゃそうだろうなと思った。じっくりとお湯につかっているおじさんを尊敬したい。

女湯までまたがって描かれたタイル絵は、桜の季節の錦帯橋。じっくりと眺める余裕などないのだが。女湯との間仕切りの壁面は、モザイクタイルで西洋の海辺らしき風景が描かれている。

いろんな銭湯で熱湯は体験しているとはいえ、六龍鉱泉の熱湯は衝撃的で、鉱泉の泉質などよくわからなかった(笑)。銭湯好きや温泉好きの人は一度体験してみる価値はあるだろう。なお、六龍鉱泉よりほど近いところには水月ホテル鴎外荘があり、こちらには鴎外温泉というお湯が湧く。日帰り入浴は1,500円で受け付けている。

六龍鉱泉
源泉/六龍鉱泉(泉質不明)
住所/東京都台東区池之端3-4-20 [地図]
電話/03-3821-3826
交通/東京メトロ千代田線根津駅より徒歩5分
     京成上野駅池之端口より徒歩9分
     JR上野駅しのばず口より徒歩10分
料金/大人450円、中人180円、小人80円
時間/15:30〜23:00、毎週月曜日定休

六龍鉱泉(東京都浴場組合)
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