スーパー銭湯などで「人工炭酸泉」を導入する施設が増えつつあるが、日本を代表する炭酸泉の本家本元といえば竹田市直入町の長湯温泉である。久住山麓の丘陵地に位置し、大分、由布院、黒川のいずれからもアクセスが良いとはいいがたく、路線バスも数本しか便がない。四方をぐるりと山に囲まれた小さな温泉地には15軒の旅館があるが、のんびりとした風景が広がっている。

炭酸泉とは温泉の成分に炭酸ガス(二酸化炭素)が溶け込んだお湯のこと。入浴すれば身体に細かい気泡がつき、毛細血管を拡張することで血流が良くなり、血圧の低下、新陳代謝の活性化が期待できる。飲用すれば胃腸を刺激し、便通がよくなるという効果が期待できる。ドイツなどでは医療用にも用いられている。昭和8年(1933)には九州帝大の松尾武幸博士が、世界でも稀有な炭酸泉であると長湯温泉を紹介。「飲んで効き 長湯して利く 長湯のお湯は 心臓胃腸に地の薬」と讃えた。平成18年には九州初の「源泉かけ流し宣言」、翌19年には「日本一の炭酸泉宣言」を行った。

ガニ湯長湯温泉のシンボルともいえるのが、町を流れる芹川の河原にあるガニ湯。無料で入浴できる露天風呂である。いくらのどかな温泉街だとはいっても、温泉街のど真ん中にあり、しかも目隠しとなるものは何もない。周囲から丸見えの状態で、川の対岸には温泉旅館もある。恥ずかしいという気持ちが少しでもあったら湯につかることはできない。

ガニ湯伝説(現地看板より)
昔、長湯温泉を流れる川にガニがいた。ある日ガニは色白の美しい村の娘に一目ぼれをしてしまった。そして人間になって娘を嫁にしたいと思うようになった。
たまたまそんなガニの切ない思いを知った川のほとりにある寺の僧が「寺の鐘を百聞けば人に生まれ変われる」と言い聞かせた。
そこで娘が湯あみに来たとき僧が鐘をつき、ガニは川の中からこれを聞いていた。僧が鐘をつきながらふと娘に目をやると娘のあまりの美しさにこれまた一目ぼれ。鐘を99までついて「娘はオレがもらう」と言って近づいたとたん、空がかきくもって大雨となり僧もガニも落雷にやられてしまった。
しばらくして川の水が引いたところ、川の中にガニの形をした大岩が現れ、無数の泡をともなった湯が湧き出した。
以来、村人たちはこれを「ガニ湯」と呼ぶようになった。

脱衣スペースは河原へと下りていく道に架かる小さな橋の下。といっても服を脱いだり着たりができるわずかな空間、そして申し訳程度の棚板があるだけ。通りから見えないということだけが気休めか。湯船まではそこから10mほどの距離。どうしても小走りになってしまう。

ガニ湯からの眺め湯船には湯の花が固化して岩にこびりつき、一面の黄土色。コケが付いているためか岩には多少ぬめりがある。お湯はわずかに緑がかった黄土色。人肌程度でかなり温め。ホースでゴボゴボと注がれていて、掛け流しであふれたお湯は川へと流れていく。ときおり飛沫をあげて勢いよく噴き出すのだが、そのときは小さな炭酸の気泡も一緒になってはじけ飛び、耳を澄ますとシュワーッという音が聞こえる。ホースから注がれるお湯を手ですくうと、うっすらと細かい気泡がつく。川面までは1m足らず。すぐそばを鴨が泳いでいる。

向かい側にある旅館からは丸見えだが、河原へと下りてきた道路側はガードレールがドライバーの視界を遮ってくれる。歩行者からは丸見えなのだが。早朝や深夜の入浴者が多いようだが、「旅の恥はかき捨て」ということで真っ昼間でも多少の勇気があればOK。せっかく来たならレッツトライである。

ガニ湯
源泉/長湯温泉(マグネシウム・カルシウム・ナトリウムー炭酸水素塩泉)
住所/大分県竹田市直入町長湯 [地図
電話/0974-75-3111(直入町観光協会)
交通/豊肥本線豊後竹田駅よりバス約40分「長湯」停下車
     大分市内から県道412号線経由で約60分
     大分自動車道湯布院ICから湯平温泉経由で約45分
料金/無料
時間/24時間

長湯温泉.com(直入町観光協会)
長湯温泉協会公式ホームページ

<参考>
炭酸泉インフォメーションセンター


長湯温泉では「湯巡り手形」を発売中(1,000円)。
湯巡り手形1枚で“源泉かけ流し協会”5軒の大浴場が利用できる。
下記の各施設で購入できる。
・ラムネ温泉館(通常/大人500円)
・万寿温泉(通常/大人200円)
・万象の湯(通常/大人500円)
・ながの湯(通常/大人200円)
・千寿温泉(通常/大人100円)

<参考>
「長湯温泉に『湯巡り手形』登場しました!炭酸泉へGOGO!」
(竹田市観光ツーリズム協会)