函嶺富士屋ホテルのある宮ノ下交差点より138号線を、左〜右へと大きくカーブし、蛇骨川に架かる八千代橋を渡る。すぐ左手には2005年オープンの日帰り温泉「てのゆ」の立派な建物が見えるが、目指す「函嶺」はその真向かい。通りには看板が1つ出ているだけなので、見過ごさぬよう注意。

看板を目印にゆるやかな坂を降りていくと、温泉施設とは思えないほど瀟洒な洋館が建っている。大正末期築だというこの建物では、かつて病院を営んでいたそうだ。そして当たり前のように個人の表札が掲げられているのだが、ここが温泉施設だと唯一思わせるのは、端っこに置かれた「お湯はこちら」という小さな看板。

函嶺洋館の中で入浴料を支払い、「こちら」と書かれた方向へ。暖簾とすだれが掛けられた簡素な建物。洋館とのミスマッチ具合が素敵だ。3帖ほどの脱衣所には、カゴを入れる棚と小さな流しがあるだけ。そして扉をガラッと開けると、期待以上のロケーション。


函嶺湯船は早川に面した斜面ギリギリのところにつくられているのだが、その斜面には一面の竹林。鮮やかな緑が目の前に広がっている。よく目を凝らしてみると、対岸の山の稜線や川の流れも見える。湯船は約1坪で、こじんまりとはしているが、やや熱めの源泉が掛け流しでたっぷりと注がれている。たくさんの湯船がある施設を望む人には物足りないかもしれないが、箱根でこの自然と一体となった開放的なロケーションは意外と希少。堪能してほしい。

自販機コーナーを挟んで露天風呂はもうひとつあるのだが、こちらは現在使用していない様子。この日の女湯は内風呂ということで、内風呂と露天風呂は男女日替わり。内風呂の雰囲気はわからないが、露天風呂なら間違いなくおすすめ。通りから目立たない立地といい、洋館のレトロ感といい、そして露天風呂のロケーションといい、知る人ぞ知る「秘湯」であってほしいと思う。

函嶺
源泉/底倉温泉(ナトリウム−塩化物泉)
住所/足柄下郡箱根町底倉558 [地図
電話/0460-82-2017
交通/箱根登山鉄道宮ノ下駅より徒歩10分
     国道1号線「宮ノ下」交差点より138号線へ。八千代橋を渡ってすぐ右側
     ※駐車場4台分あり
料金/大人700円、小学生以下500円
時間/10:00〜18:00、不定休

(参考)「神奈川の近代建築-横浜近代建築アーカイブクラブ-」