一の湯本館(塔ノ沢)箱根湯本駅前から函嶺洞門を過ぎ、塔ノ沢地区に入ると、道の両側には趣のある木造旅館が建ち並ぶ。「一の湯」も明治期に建てられた数寄屋造りの木造4階建で、創業は寛永7年(1630)だという。背後は早川渓谷の流れに面し、いわゆる老舗旅館なのだが、箱根各地に点在する系列旅館7店舗と合わせて「一の湯グループ」として営業展開している。これらグループ各旅館では1人あたり1万円前後という格安の料金で宿泊できる。

一の湯本館では日帰り入浴も受け付けており、日帰り客も宿泊客と同じ浴室を利用する。玄関を入るとフロント、そして右手にお土産コーナー、左手に囲炉裏を囲んだ休憩コーナーがあり、浴室はその先にある。女湯が「金泉の湯」、男湯が「恵みの湯」で深夜から午前中の間は男女が逆になる。宿泊して朝風呂につかるならば両方の湯に入れるというわけだ。ちなみに湯船は金泉の湯のほうが大きな造りのようだ。

浴室には洗い場と湯船が1つあるだけ。洗い場には蛇口が3つ並び、水しか出ない。お湯は目の前にある溝に溜まっているので、そこから手桶で汲み上げて使う。このお湯は源泉そのもので、かけ流しとなっている。「江戸時代の上がり湯の不便さを…」というが、シャワーの生活に慣れてしまっていると、たしかに不便である。湯船のほうは循環かけ流し。黒い石造りで、4〜5人が入れそうな台形の形をした浴槽。

旅館のお風呂としてはこじんまりとしているが、露天風呂・展望風呂付きの客室もあるのでこの大きさでも混まずにやっていけるのかも。旅館の日帰り入浴だと宿泊客がチェックインする時間帯には終わってしまうのが普通だが、ここは20時まで利用できるでちょっと立ち寄りたいときには非常に便利。当日に限って、箱根のほかの地区にある「一の湯」グループの旅館のお風呂にも入浴できる。あちこち湯めぐりしたい人にはおすすめ。(→一の湯グループ「湯めぐり・立寄り(日帰り)温泉」を参照)

塔ノ沢一の湯本館
源泉/塔之沢温泉(単純温泉)
住所/足柄下郡箱根町塔ノ沢90 [地図
電話/0460-85-5334
交通/箱根登山鉄道箱根湯本駅より旅館組合送迎バス
     または箱根湯本駅よりバス3分「上塔ノ沢」停徒歩1分
     湯本駅前より国道1号線で函嶺洞門を過ぎ、玉の緒橋を渡ってすぐ
料金/大人1,050円、子供500円(タオル付き)
時間/13:00〜20:00