白骨温泉公共野天風呂白骨温泉は中部山岳国立公園の山深い谷間にある。国道158号線の沢渡集落より枝分かれしていくのだが、道幅は狭くなり、だんだんと山奥へと進んでいることを実感させられる。しばらく山道を走り、そして湯川に架かる橋を越えると、そこが白骨温泉の入口。観光案内所の小屋とバス停、土産物屋、公共野天風呂の入口の門がある。13軒ある旅館は適度な距離で点在しており、温泉街らしい賑わいはまったくない。ぶらりと立ち寄る店や見どころもないので、泊まり客は旅館に直行し、一晩を過ごすのではないだろうか。白骨という温泉の名前自体は有名なので大きくて賑やかな温泉街を想像してしまうが、まったく正反対の静かな雰囲気だった。

白骨温泉の歴史は古く、鎌倉時代にはすでに湧出していたとのこと。武田信玄は炭鉱夫や負傷した兵を湯治させていたという言い伝えもある。その当時はさまざまな名で呼ばれていたようだが、「白船」「白骨」の名が古文書に現れたのは240年前のこと。谷間にたたずむ地形が船の形をしている、くりぬいた湯船に湯の成分がついて白い船に見えるということから「白船」。一方「白骨」の名は中里介山の小説『大菩薩峠(白骨の巻)』の影響が大きいようだ。

公共野天風呂は観光案内所の向かいにある。通りに面して入口の門があり、そこから湯川の土手へと階段を下りていく。途中で目を凝らすと、湯につかっている人影がわずかに見えるのだが、それもご愛嬌。残念ながらそれは男湯である。建物は川べりにある。湯川は野天風呂のあたりで2つの流れが合流し、まわりは直角以上に切り立った崖になって岩肌が露出している。そんな景色を眺めながらの入浴である。湯船は大きな円形のものが1つだけ。やや青みがかってはいるが乳白色のお湯だった。

さて、白骨温泉といえば2004年の入浴剤問題である。公共露天風呂をはじめ、一部の旅館やホテルで草津温泉の入浴剤を混ぜて、湯が白く濁ったように見せていたという偽装問題である。そもそも白骨のお湯は湧出時は無色透明だが、時間が経って空気に触れると、硫化水素とカルシウム成分の化学反応で徐々に白く濁っていくのだ。岩づくりの湯船のまわりにもあふれ出た源泉の成分が堆積し、真っ白でつるつるになっていた。これも化学反応の結果である。

白骨温泉のパンフレットによると「3日入れば3年風邪をひかない」という。たしかによく温まるお湯であるが、当地の温泉旅館で働いている某友人に尋ねたところ、「風邪はひいていないが、頭痛がして具合は悪い」と言う。効果のほどは人それぞれであるが、まわりの景色もいいし、野天風呂自体の雰囲気もいい。日常のストレスなんてすぐに吹っ飛びそうなお湯である。秘湯というほどでもないが、わざわざ訪れるだけの価値はある。

白骨温泉公共野天風呂
源泉/白骨温泉
     (ついとうし源泉:含硫黄−カルシウム・マグネシウム−炭酸水素塩温泉)
住所/長野県松本市安曇白骨温泉 [地図
電話/0263-93-3251(白骨温泉観光案内所)
交通/松本電鉄新島々駅よりバス約55分「白骨温泉」停前
     松本市街から国道158線。「湯川渡」より県道白骨温泉線へ(冬季通行止)
     または「前川渡」より県道乗鞍岳線で乗鞍高原を経由し、
     上高地乗鞍スーパー林道経由で。
料金/500円
時間/8:30〜17:00
※11月下旬〜4月下旬まで休業

・白骨温泉公式ホームページ