柳川の川くだり-船頭さん柳川市は福岡県南部に位置し、福岡(天神)駅から西鉄電車で約45分。有明海に面する都市である。江戸時代には12万石の城下町として栄え、市街地には掘割が網目のように整備されている。水郷と呼ばれ、掘割の川下りを目当てに多くの観光客が訪れる。

掘割は約400年前に柳川藩主が城の防御のために整備し、以後物資の運搬や生活用水として利用された。明治以降になると堀に船を出して遊ぶ「川遊び」が盛んになり、昭和29年に北原白秋の少年時代を描いた「からたちの花」(長谷健/著)が映画化されると、全国から注目を浴び、柳川の観光名物となったという。



川くだりの風景川下りは6社が営業しているが、多くの会社が柳川駅近くの船着場を出発し、御花へと至る約4km、70分ほどのコース。今回は西鉄の福岡〜(大宰府)〜柳川の往復乗車券と川下り乗船券がセットになった「いちにち紀行〜大宰府・柳川観光きっぷ」(大人2,800円)を利用。




川くだり。狭い橋をくぐる。柳川駅に着くと乗船場までワゴン車で送ってくれる(歩いても5分ほど)。ある程度の人数が揃ったら出発。川下りを営業するのは西鉄のグループ会社である西鉄柳川観光開発。ちなみに個人で申し込むと大人1,500円、子供800円(営業時間は9:00〜17:00(6〜10月は17:30まで)、年中無休)。「どんこ舟」と呼ばれる細長い小さな船を、ベテランの船頭さんが竹の棹で漕いでいく。コースには橋が11ヶ所あり、小さな橋だとみんな頭を低くしてもギリギリな感じ。

川くだり。船は柳川城の内堀へと入っていく。柳川城は九州屈指の難攻不落の城と言われたらしいが、明治5年の大火により焼失。城跡は柳川高校、柳城中学校の敷地となっている。柳川高校はスポーツの強豪校として有名。古くは阪神の真弓、現役選手では香月(オリックス)、憲史(楽天)、花田(ヤクルト)、林威助(阪神)という顔ぶれを輩出している。


田中吉政公の像田中吉政は1590年に徳川家康が関東に赴いた後に岡崎城主となり、その後、関ヶ原の合戦の功績により、1600年には柳川城主となった。立花家が代々治めた柳川藩の歴史の中で田中吉政とその子供の期間はわずかだが、掘割を整備した田中吉政の功績は大きい。

川下りのルート上には北原白秋の童謡「まちぼうけ」の碑や直木賞作家・壇一雄や芥川賞作家・長谷健らの文学碑も立つ。






御花-西洋館川下りの終着地は「御花」。ここは柳川藩主立花家の別邸があった場所。四方を堀に囲まれた約7000坪の敷地からなり、元禄10年(1697)に造営された。御花という名前は、造営当時に「花畠」という地名だったことにちなむ。国指定名勝の松涛園は立花家の庭園で、日本三景の松島を模してつくられた。西洋館は立花家の迎賓館として明治43年(1910)に建てられた鹿鳴館洋式の建物。奥に続く本館は明治42年から43年にかけての建築。現在は料亭旅館として営業している。

うなぎのせいろ蒸し柳川鍋








うなぎは江戸時代から柳川の特産品。硬めに炊いたご飯にたれをまぶして蒸し、蒲焼にしたうなぎをのせて再度蒸し上げ、錦糸玉子を散らしたのが柳川の名物「せいろ蒸し」。市内には数十軒の店があり、また、柳川市内では年間120万匹のうなぎが消費されているという。川くだりのルートの途中には「うなぎ供養碑」という石碑もある。毎月7日には掘割にうなぎを放流して供養するほか、土用の丑の日の前には供養祭が行われている。

正確に言うと船が着くのは御花の前の「六騎」という店の前。うなぎめし1,800円、柳川鍋850円。西鉄の切符には割引券がついている。

北原白秋生家御花からほど近い所に北原白秋の生家がある。日本を代表する詩人・童謡作家・歌人である北原白秋は、明治18年(1885)に柳川市に生まれた。北原家は代々柳川藩御用達の海産物問屋であったが、白秋の父の代には酒造業を営んでいた。裕福な家庭であったが、明治34年の沖端の大火により酒蔵を焼失(以降、家運は傾き始める)。この頃から詩歌の制作に熱中し、白秋の号を使う。37年には上京して早稲田大学予科に入学。与謝野寛や石川啄木などと交流し、以後第一線で活躍する。昭和17年(1942)東京都杉並区で逝去。

北原白秋生家-室内北原白秋の生家は明治維新前後の建築といわれている。明治34年の大火で大半を焼失し、残った母屋も荒廃していたが、昭和44年に復元し、一般に公開されるようになった。福岡県指定文化財。

昭和60年には白秋生誕100年の記念事業として柳川市歴史民俗資料館(白秋記念館)が開館した。中世以降の柳川の歴史と民俗、白秋の生涯と作品を紹介している。

北原白秋記念館
住所/柳川市沖端町55-1 [地図
電話/0944-72-6773
交通/西鉄柳川駅よりバス「お花前」停徒歩12分
料金/大人400円、小人150円、学生350円
時間/9:00〜17:00、年末年始休館