富士の湯平塚2丁目周辺は国道1号線と旧東海道に挟まれた旧市街地といった感じの住宅街。民家がびっしりと建っているのだが、ところどころにスナックなどが店を構えている。

富士の湯は八間通り(県道伊勢原平塚線)の平塚裁判所の交差点の1つ手前の角を西に曲がってすぐのところにあり、平塚駅西口から約1km。歩いて行けない距離ではない。

上階は自宅なのかアパートなのかよくわからないが、モルタル塗り陸屋根の2階建。入口のサッシには黒のマジックで営業時間が手書きで記されている。番台でお金を払い、脱衣所を眺めるとあらゆるところにマジックで注意書きが記されていた。ベンチには「ノーパンで座らないように」。灰皿には「火を消してから」。ロッカーには「鍵を持ち帰らぬように」。窓枠には「ここに石鹸箱を置かないで」。などなど。脱衣所の壁には鍵のついたロッカーが20個並び、反対側の壁には大きな鏡と常連さん専用の棚。ほかにベンチと家庭用の小さな冷蔵庫が置いてあるだけ。たいして広くはないのだが、シンプルなぶんだけゆったりしているように感じる。

浴室は蛍光灯の数が少なくて湯船のほうは薄暗くも感じる。カランは浴室の左右と真ん中に約20ほど。シャワーがあるのは両サイドのみで、すべて固定式。そしてお湯はなぜかぬるい。湯船は奥のほうに“ 「 ”の形をしたのが1つだけ。ゆったりとした大きさで、ところどころ弱い勢いでブクブクしている。温度計では42℃を指しているが、もっとぬるいように感じる。長湯ができるというのは言い方次第だが。「ウコンが入っているので黒ずんで見えます」とマジックで書いてあったが、そもそも蛍光灯の明かりが弱いので、黒ずんでいるのかどうかよくわからない。そしてウコンの効果のほどもよくわからない。壁には丸く茂った大木の絵が緑1色で描かれている。

銭湯というよりも、大学生が夏合宿で訪れるような民宿の大浴場といった雰囲気。懐かしいような感覚。あらためて脱衣所を見ると、「銭湯が少なくなっています」ということで、署名の紙が置いてあった。全国的に減少傾向だから主人が署名を募っているのか、それとも「富士の湯」が廃業しないよう誰かが署名を募っているのかよくわからない。わからないところがたくさんあって、なんだか興味深い銭湯である。

富士の湯(神奈川県浴場組合)

富士の湯
住所/平塚市平塚2-11-1 [地図
電話/0463-31-6036
交通/平塚駅北口よりバス4分「八間通り」停徒歩2分
料金/大人430円、小学生以下180円、未就学児80円
時間/15:30〜20:30、毎週火曜日定休