北川温泉黒根岩風呂伊豆には数多くの温泉街があるけど、ここは間違いなく「秘湯」の部類。伊東から国道135号線をさらに南下すること約20km、北川(ほっかわ)温泉は旅館とホテルが8軒しかない小さな温泉街。国道からの入口には看板があり、そこの道を下っていくと黒根岩風呂がある。海岸に面した混浴の露天風呂だ。

駐車場や高速道路の料金所をもっと小さく、そして簡素にしたつくりの小屋があり、そこでお金を払う。岩風呂にはその脇にある階段を海岸に下っていく。風呂といってもそれらしい設備はない。手前に見える木造の小屋が男性の脱衣所、そして岩を並べて囲った風呂があり、その向こうは女性の脱衣所、さらにその奥にもうひとつ湯船がある。コンクリートを流して平らにした通路の反対側は岩場の海岸になっている。

男性の脱衣所は三方は囲われているだけで、湯船のほうには壁がない。棚が並んでいるだけの丸見え状態。女性の方はというと四方が壁で囲まれているが、海岸のほうに向いた入口に扉はなく、その前の通路の先にはもうひとつの湯船があるので、男性が立ち止まったらアウト、という微妙な状態。

さっさと服を脱ぎ、お湯につかる。浅めだけどゆったりと広さの岩風呂が2つ並んでいて、お湯が絶えず注ぎ込まれている。あふれたお湯は海のほうへとかけ流されている。やや温めの湯加減だけど、塩分を含んでいるのでしばらくすると汗が噴き出してくる。近くにあった岩を並べてみました的な造りだけど、この素朴さがいい。湯船の一部にはこれまた簡素な屋根がついている。

女性の脱衣所の先にあるのはコンクリートにタイルを張った円形の湯船。岩風呂のほうは海面からの高さが50cmほどだが、こちらは一段高くなっていて、それでも1mくらい。お湯につかっていると目線の高さに海岸線を一望でき、3〜4m先には波が押し寄せているといった具合。漁船の形もはっきりと見え、晴れた日には伊豆大島が遠くに見えるという。こちらには屋根がなく道路から丸見え。

さて、黒根岩風呂は「混浴」なのであるが、水着は禁止。そのかわりバスタオルはOK。訪れたのは21時過ぎだったが、男性ばかり15人くらいの客の姿。うち半数の人が浴衣姿だったので旅館の泊り客。夕食あとに一杯やって…、といった感じか。途中で中年夫婦がやって来たけど、みんな何を期待しているのか、それともぬるいからか、とにかく長風呂である。僕も1時間くらいつかっていたが、ちょうど出るときになって大学生くらいのカップルが3組。残念な結果だが、また入り直すのも馬鹿みたいなのでやめておいた。

料金所のおじさんに聞いたら、週末の夜はこれ以上に混むのだとか。そして早朝も。季節によっては日の出を見ながら入浴することも可能だ。海を一望できる露天風呂は全国に数多くあるけど、海と一体になったロケーションというのは珍しい。そしてこの開放感はなかなか味わえない。女性専用タイムもあるので、旅の思い出にぜひ。

黒根岩風呂
源泉/北川温泉(ナトリウム・カルシウム−塩化物泉)
住所/静岡県賀茂郡東伊豆町北川 [地図
電話/0557-23-3997(北川温泉観光協会)
交通/伊豆急行線伊豆北川駅より徒歩7分
     国道135号線「北川温泉入口」交差点より旧道へ50m
     ※駐車場あり
料金/600円(入浴は60分以内)
     ※北川温泉街の宿泊客は無料
時間/(午前の部)6:30〜9:30
     (午後の部)月〜木16:00〜23:00
            金・土・日・祝日は13:00〜23:00
            うち19:00〜21:00は女性専用
     年中無休、ただし高潮危険の日は中止